僕の所有者宣言 ■しおりを挿む
ていうか、僕の企みってアルの意表を突いてびびらせるみたいなのじゃなかったっけ?
うん、だって、キスしないのかって聞いた時のアルの顔見て、勝ったとか思ったし。
なのに、何故か僕はいっぱいキスされまくった。
しかも昼休みに入ったばかりの教室で。
で、なんだか姫抱きで連れ出されて、あまつさえアルの胸元に顔埋めて甘えてる。
ヤバい、脳みそ沸騰しそう。
策士、策に溺れる…じゃないな。
むしろ、意表を突くことには成功したけど相手のいい方に転がった形。
…オウンゴール的な?
あぁ、そうか…僕、アルのアシストしちゃったのか。
バカなことしちゃったかな。
でも後悔はしてないからいいや。
キィ、という扉が開く音に思考を一旦中断する。ここはどこだろう。
「ここは理事長室備え付けの応接室です。今は誰もいません」
「えっ!誰もいないからって理事長室なんて使っちゃダメだ」
ゆっくりと高そうなソファに下ろされ、僕は慌てて居住まいを正す。
「私の部屋みたいなものですから、心配しないでください」
「は?」
今、部員がほとんどいない部活の部長が、私室化してる部室に対して言うようなセリフを吐かなかった?
いくら理事長が普段いないからってどんだけ大物だよ。
「正太郎にだけは話しておきます。この学校の所有者は私の実家なんです。 実はマイヤーは母方の旧姓で、私の本名はアルブレヒト・クリフォードです。」
クリフォードっていうと、ピンと来るのは世界的大富豪と言われているクリフォード家。
僕はあまりそういう規模の大きな話に興味がないから、名前を知っている程度なんだけど。
そんなスケールのでかい話はひとまず置いておくとして、この学校がアルの家の持ち物だなんてびっくりだ。
「でも、理事長って人の好さそうな日本人の爺さんでしょ。去年の入学式で見たよ」
どう見ても目の前の、バリバリ外国人!なこいつの爺さんには見えなかった。
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