僕の所有者宣言

しおりを挿む


 色気を含ませたつもりが、何故か甘えるような声になったのは失敗だったけれど。


「…っ!」


 閉じた目蓋の向こうで息を呑む気配を感じた。

 相変わらず頬にはアルの手が添えられたまま。

 さっき言ってしまったセリフがすっごく恥ずかしいけど、事態がなかなか動かないから目を開けてみた。

 目の前には耳まで真っ赤なアル。

 わりと至近距離でばっちり目が合ってしまった。

 途端にアルの目が切なげに細められる。


「正太郎がいけないんですからね…」


 あぁ、なんて色っぽい声なんだ。

 僕はがんばっても甘えるような声にしかならなかったのに。

 なんて考えてる間に触れる唇。

 柔らかいそれに、僕の唇もアルからすれば柔らかいんだろうかなんて思ってみたり。


「!?」


 って、今、僕キスされたよね?

 何げに自然と目を瞑ってるんだけど。

 チュ、チュ、と何度かついばまれる。

 まるで僕の唇の感触を確かめるようなキス。

 これってどう数えればいいの?

 五回目のチュ、は、5thキスなの?

 それともひっくるめてファーストキスでいいの?


「んんっ…」


 変に現実逃避に走っていたら、思いもよらずおかしな声が出た。

 鼻に抜けたそれがやけに甘ったるい。

 自分のじゃないみたいで内心戸惑う。

 いつになったら終わるんだろう。

 僕は力が抜けて動けないからアルがやめるのを待つしかないんだけど。

 長いよ、これって普通?

 そう思いながらうっすらと目を開けたら、漸くキスが止んだ。


「正太郎…愛してる」


 なんだか目蓋が重くて完全には開かない視界の中、アルは本当に幸せそうに微笑んでいる。

 そして突然両手で頬を包み込まれた。


「え」


 一瞬思考がクリアになるも、僕のちょっと遅い脳の回転よりもアルの動きの方が早かった。



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