The Frog in the Well | ナノ


うしてクリスマスや感謝祭のように、年に一度じゃダメなのだろう。月に一度という頻度が憎い。リーマス・ルーピンは虚ろな目を泳がせた。
せめて3ヶ月に一度、いや望みは大きく、いっそのこと地球の自転と公転を止めて同時に月の自転と公転も止めてしまえば……


The frog in the well knows nothing of the great ocean.


「なにブツブツ云ってるの。それ、インク滲んでるよ?」

ピーター・ペティグリューに指摘されて手元を見る。滲みどころか、リーマスの薬草学のレポートには、小さな穴が空いてしまっていた。

「――ああもう、僕はバカか!」
「な、なにどうしたのインクのシミぐらいで……!」

大きく音を立てて立ち上がると、驚いたピーターが、ぴょんとネズミのように飛び上がった。談話室にいた生徒の何人かも、訝し気にこちらを見ている。向こうにいる女生徒はヒソヒソと肩を寄せて囁き合っている。
落ち着け、落ち着くんだリーマス。
彼は自分にそう云い聞かせ、羊皮紙をぐしゃぐしゃと丸めて、ソファの後ろへ放った。

「ピーター、先に部屋に戻るよ」
「そんなにシミがショックなの!?待ってよリーマス!」

ルームメイトの3人には、もう正体が知られている。それでも、人狼であるという事実は何も変わらないし、彼らだってまだ本当の自分は見てない。
僕は怖い生き物だ。猛獣だ。本当にこんなことをしていて、いいのだろうか? 他人を巻き込むなんて。それも友達を、3人もだ。信じられないし、あまりにも恐ろしいことに思えた。ダンブルドア校長が知ったら、一体どう思うだろう。
さらに、この期に及んでナマエ・ミョウジにまで理解してもらおうだなんて、そんなのはムシがよすぎるのではないか。あのジェ−ムズ・ポッターが何をどうする気なのかは知らないが、自然現象は、止められっこないのだ。

まるで底なしの泥沼だ、とリーマスは思った。


 

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