The Frog in the Well | ナノ


「リーマス。きみ、ナマエと喧嘩してるってのは本当かい?」
「……嬉しそうだね、ジェームズ」
「そう見える?」

ジェームズ・ポッターは嫌味なほどにっこりと笑った。あのときもう3発くらい殴っておけばよかったかもしれない、とリーマス・ルーピンは思った。
彼の趣味は他人のトラブルに首をつっこむことだ。それは間違いない。

「日常に刺激を求めている、と云ってほしいもんだな」

この変態め、と視線だけで告げてやる。この手合いを真面目に相手にするのは愚かだということは、ここホグワーツで学んだことの一つだ。どうせ始めから話さなくても、無駄に頭の回転がはやい彼には、喧嘩の内容もその理由にも見当がついているのだろう。

「……彼女に明かすのと、きみたちに明かすのじゃ全然違うよ」
「おお、それは光栄だ。まあ僕らの場合は、無理矢理に暴いたわけだしねえ」
「それに、ひどいことも云ったんだ」

関係ない、と、耳を傾けようとした彼女を突き放した。同じように関係のなかったルームメイトには、すでに知られているというのに。彼女だけが何も知らなくていいと思うのは、危険な目に合わせたくないからか、それとも己の保身のためか。
恐らく後者だ。つまりはエゴで、正しいのはナマエ・ミョウジの云い分だ。

「だったら、謝ればいいじゃない。悪いと思っているのなら」
「あのねジェームズ。そんな単純なことじゃないんだよ」
「単純なことだろ。馬から落ちてもまた乗れる。馬が消えるわけじゃない」

ジェームズにしては珍しく能天気な云い方だ、とリーマスは思った。またお得意の、なにか小難しい言葉でも引用して丁寧にかつしつこく説得してくれそうなものなのに(あるいは彼の祖父の体験談から長々語る、というパターンもある)。
空腹のせいもあって、こちらまで力が抜けてきた。

「……ああ、そうかもね……。何なら彼女の前で、変身してみせる?」
「アホ抜かせ」

いつの間にか、ドアの前に小さな紙切れを持ったシリウス・ブラックが立っていた。

「おい、何か妙なことになってるぞ」


 

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