The Frog in the Well | ナノ


付けば宿題はそっちのけで、例の”地図”計画が進行していた。
教科書や参考資料を床にずらりと並べ、役に立ちそうな部分をメモしてゆく。以前のリーマス・ルーピンであれば、ベッドにカーテンを引いて読書をしたり、図書館で勉強をしていた時間だ。

「結構あるもんだな。隠し通路に空き部屋に」
「校外への出入り口なんかも知りたいよね」
「きっと、この倍以上はあるんじゃないかな。足で調べるしかなさそうだけど」

頷いたシリウス・ブラックが、羽ペンをくるくる回している。ピーター・ペティグリューはそのすぐ横で、床に寝そべりながら本をめくっていた。
リーマスの、ジェームズ・ポッターいわく”ふわふわした小さな問題”は解決もしておらず、何も変わっていない。そして、そのことを彼らはついこの前に知ったばかりだというのに、今じゃこうして一緒にだらしなく床の上でお菓子を食べて、バカなことを真剣に話し合っている。
その何だかとても妙な落差に、リーマスは自然と緩む頬を押さえ込んだ。

「しかし、こうして見ると3年の休暇のありがたみがなくなりそうだよなあ……」
「通路の問題じゃなくて、時間の問題じゃない?そう遊んでばっかりもいられないよ。宿題とか、レポートだって増えるだろうし」

真っ白な羊皮紙をいくら睨んだとて、文字は浮き出て来ないのだ。何なら呪文でも唱えてやろうかと教科書をよけた瞬間に、それは頭に浮かんだ。

「……透明インクじゃなしに、呪文で文字を出現させる方法ってあったっけ?」
「没収対策だな。いいね、その案いただき」
「そういう本もジェームズに探してきてもらえば良かったね」
「ああ、あいつ多分図書館にゃいないぜ。またエヴァンズに付きまとってんだろ」

ジェームズは資料を集める役割だったのだが、どうやら私用のためにサボタージュを決め込んでいるらしい。確かめる術はないけれど――いいや。
シリウスもどうやら同じことを考えていたらしく、羽ペンを持ち直してニヤリと笑った。

「人物の所在も分かれば、便利だよな?」

訂正、”今のところ”は確かめる術はない。


 

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