The Frog in the Well | ナノ


の世界に一度足を踏み入れたなら、今までの生活がひどく退屈に思えて仕方がないはずだ。年頃の健全な少年ならば、冒険は買ってでもしなければならない。
当然、リーマス・ルーピンだってそれは例外ではないのだ。

もっとも、約2名のルームメイトほど、リベラルな道徳観を持ち合わせているわけではなかったが。

「ホグワーツの地図?」
「そう、秘密を共有したからには協力してもらわなくちゃね」
「『忍びの地図』ってんだよ、どう思う?面白いだろ?」

へえ、と感心した様子で、リーマスは彼らの計画表をのぞきこんだ。

「管理人室侵入はこれのためもあったのか。あと、最近やたらと調べものしてたのも……」
「まあね。原案は入学したてのころに考えたんだけど」

実際のところ、調べものをしていた本意は(すべてではないにしろ)別のところにあった。リーマスの”ふわふわした小さな問題”について、彼らは以前よりもより熱心に調査を重ねている。しかし、ジェームズ・ポッターはそんなことおくびにも出さずに涼しい顔で、あさってを向いている。ピーター・ペティグリューはあいかわらずオロオロと視線を動かしているが、これはいつものことで、不自然さは見当たらない。シリウス・ブラックは笑いを噛み殺すしかなかった。
恐らくこれも、例の「スマートかつセクシーな作戦」の一環なのだろう、と彼は思う。ちょっぴり不安ではあるが。

「完成とまではいかなくても、少しはサマになってから話したいってことでね」
「そりゃそーだろ」
「恥知らずだけどプライドは高いんだよね、シリウスは」
「ああ。それは分かるよ」
「そりゃそ……おい、ちょっと今の訂正しろ!」

そういうわけだから、君の知恵も貸してくれたまえ。
呪文やら図式やらが模様のように書き込まれた羊皮紙を受け取りながら、ようやくリーマスが笑った。物事は明るい方向へ転がっているような気がした。

11. Pink of Condition



 

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