ざわざわと騒がしい夕食の席で、ナマエ・ミョウジの両目は鳶色の髪を探している。スパイのごとく目を光らせ、片手ではシチューの中のブロッコリーをぐりぐりと分解しながら。
リリー・エヴァンズはその行為に、思いきり眉をひそめた。
「ねえリリー、まだリーマス来てない?」
「私たちが入ったころに、食べ終わってたみたいだけど。……あとそれ、お行儀悪いわよ」
「ノオオー!またしても!すれ違い!」
ブロッコリーはもはや、みじん切り状態になっていた。
「約束でもしてたの?」
「ううん、ちょっとね。話がしたかったんだけど」
どうも近頃の彼女は、リーマス・ルーピンのことを妙に気にかけているようだ。たしかにリリーとて、彼が気にならないかといえばそんなことはない。いつだってリリーは考えている。定期的に「祖母の見舞いだ」という理由で姿を消したり、体中がなぜか傷だらけだったりすることつにいて。
むろん、プライベートな領域だろうから、深くは踏み込めないし、秘密を暴いてやろうとはつゆとも思っていない。
「あーあ、シリウスとも話しにくくなっちゃったな……。タピオカはトラウマ決定だし」
「心配しなくてもデザートに出るのは稀だと思うわ」
「しばらく女の子の友達もできそうにないし」
「あら、ナマエったら」
そんなふうに思わないの、とリリーは彼女の背を優しく撫でた。ここはたしかにマグルからすると特殊な世界だが、人気のある男の子が特定の女の子と仲良くなるだけで、そういう厄介なことが起こりうるというのは、ごく健全な場所だという証拠でもある。シリウス絡みの嫌がらせは落ち着いても、それは根本的解決ではない。年頃の男女の世界とは、すべからくそういうものなのだ。
「ねえナマエ。ところであなた、リーマスのことはどう思っているの」
「どうって何が?」
リリーは「そりゃあ」と呆れたように、頬杖をついた。
「男の子としてどうかってことよ」
そして彼女たちもまた、その世界の住人なのである。