The Frog in the Well | ナノ


き出したナマエ・ミョウジを彼女の鞄(inタピオカ)とともに引きずり出し、とりあえず空いている教室のドアを閉めたあとで、セブルス・スネイプは思った。

どうしていつもこうなるんだ、と。

「ミョウジ、その……分かったから。泣き止め」
「うぅううええぇえええシリウスのドアホおおぉお」
「それには激しく賛同するが、まずは涙腺を締めろ。顔から涙以外にも色々出てる」

ハンカチを差しだすが、この調子ではあまり意味がない。既に彼女のローブの袖は重たく湿っている。事態が落ち着くまで、とりあえずはタピオカをどうにかすることにした。

「つ、付き合ってないって云ったのに、嘘ついてないのに、わたし、悪くないのに」
「あーはいはい。悪くない悪くない」
「なのによりによって、黒い、タピオカ」
「(そこか)」

渋々ながらナマエの鞄からタピオカをかきだしていたセブルスは、ため息と共にゴミ箱へそれらを流し捨てた。気持ちが悪い。夢に出てきそうだ。

「そもそもミョウジは、ブラックのことが好きなのか?」
「好きだけど、だからってべつに恋してるわけじゃないわ」

仲良くなったのも最近だし、とようやく落ちついた声で答えるナマエの姿にセブルスは安堵した。顔には微塵も表れないが、はっきり云ってものすごく焦っていたのだ。女の子が泣きじゃくる事態に直面した経験は、限りなくゼロに近い。
ナマエは渡したハンカチをあてて、遠慮もなく思い切り鼻をかんでいた(そりゃもう景気良く、チーンとだ)。

「ならば、そのうち誤解はとけるだろう」
「そう思う?」
「多分な」
「うん……そうよね。こんな妬みの渦中に身を置かず、もっと夕日や汗や甲子園、そういった美しい青春と友情を築き上げるべきなのよね。それが健全たる学生というもの、セブルスもそう思うでしょ?そうして生まれるものこそが、一生における宝に……」
「よし。鞄が乾いたから帰れ」


 

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