The Frog in the Well | ナノ


んできた枕が顔に直撃し、床に落ちると、ピーター・ペティグリューをのぞく2人(つまりジェームズ・ポッターとシリウス・ブラックだ)が「まずった」という顔をして突っ立っていた。
シン、と部屋が静まりかえる。
痛々しい姿がいくぶんかマシになったものの、リーマス・ルーピンの体は包帯と絆創膏だらけで、服は茨の中を走ってきたかのようにボロボロだった。

「……お出迎えをどうも」

力なく笑いながら、リーマスはポケットから出した小さな瓶を3人の方へ投げた。

「元気爆発薬。医務室でくすねてきた」

へえ、とシリウスが意外そうにリーマスを見つめ、ジェームズはさっそく耳から蒸気を発射した。
リーマスはよろよろとベッドに近づき、部屋の中を見回した。本やら枕やら消毒瓶やらが散乱し、お世辞にも綺麗な部屋とは云いがたいが、ここがこんなにも落ち着ける場所であると感じたのは初めてだった。

「よお。調子はどうだい、狼くん」
「……すごく痛いよ。2発ですんで良かった、死ぬほど痛かった」
「いやいや、君の骨っぽいパンチもなかなか」

ジェームズが真顔で答えると、反対側に立っていたシリウスの肩がクツクツと震えた。

「そのあとで誰かさんにもぶん殴られたし。ねえ、シリウス?」
「おまえも俺のこと殴っただろうが!それも3発も」

ジェームズは、さもおかしそうに喉の奥で笑いながらベッドに転がった。

「午前中は自習決定だな。スラグホーンには悪いけど、僕らに今必要なのは学習よりも睡眠だよ」
「うむ。朝食はあとで調達するとしよう」

調達?と小首を傾げるリーマスに、シリウスが「あとでな」とニヤリと笑ってみせた。

「けどさ、代わりに俺たちにも教えろよ。暴れ柳の対処法とか」
「ああ……意外とあっけないもんなんだよ、あれ」

リーマスがそう答えながらベッドにダイブすると、白い羽毛がふわりと飛び上がった。そう、複雑そうな物事というのは、蓋を開ければ意外とあっけないものだったりするのだ。


 

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