The Frog in the Well | ナノ


リウスとジェームズ、シリウスジェームズ、シルェームス、シレームス。
……誰。
頭の中ではぐるぐると、マグルの洗濯機のように二つの名前が回転、混合し、ふたたび分裂した。くせ毛のメガネ少年ジェームズ・ポッターと、ホグワーツ女子のアイドルであるシリウス・ブラック。いつも彼らが手の凝った、しかしおもしろい悪戯をしかけて生徒たちを沸かせているのは周知である。二人は減点キングスだった。そして彼らとセブルス・スネイプが犬猿の仲であることも、校内ではよく知られていた。
ナマエ・ナマエは断じて怒ってなどいない。ただ一言云ってやりたいだけだ、わたしの人生から奪った2時間を返せ、と。

そういうわけで、ナマエは廊下を競歩で進んでいた。廊下は走ってはいけない。

「シリウス、十二時の方向!」

そうそう、そんな名前だよ容疑者は……と顔を上げた瞬間、彼女の体は反転し、思いきり腰を強打した。エイリアンが絞め殺されたようなうめき声をあげ、ナマエの視界、フェードアウト。

「……い、ってぇ」
「火薬くさっ……痛い!くさい!そして重い!」
「わあ大変、シリウス轢いてる!女の子つぶしてる!」
「え? あ、悪い」

どうやらナマエはラリアットをかまされ、引き倒されたらしかった。差し出された火薬くさい手を、よろよろと掴んで立ち上がる。

「あの、お尻が、信じられないくらい痛いのですが……」
「ほらシリウス。ナマエのお尻に謝りなさい」
「卑猥な言い方もご遠慮願いたいのですが!」
「そうだぞ、大体おまえが”十二時の方向”とかややこしい言い方するからだよ。普通に前方注意と云え」
「だってそのほうがカッコいいじゃない。トップガンみたいだろ?」
「あのさ、まずは目の前の本人に謝罪すべきでしょ。何が起きても知らないよ?」


 

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