marigold | ナノ



リーマスは数秒固まって、それから笑い出した。

「え、何このおもしろ光景……」
「それさっき俺が云った。少しも笑えねえからな実際。あと遅いよ帰ってくんのが」

ごめん、ただいま。云いながら上着をかける間もリーマスはしつこく笑っていて、ようやくソファに座ってもまだ肩が震えていた。更にはマリゴールドが事情を話し、「スネイプに背負われて帰ってきた」という部分までさしかかったあたりで、とうとう両手で顔を覆ってしまった。完璧にツボに入ったらしい。
三人はそれを無言で眺めたあと、論点を戻した。

「で。足は大丈夫なのかよ?」
「とりあえず冷やして動かすなって。これ家の人にって、ポンフリー先生から」

マリゴールドは鞄からがさごそと手紙を出すと、向かいのソファへ手を伸ばした。片足ではうまく立てないことを見越したスネイプが渋々リレーする。シリウスは非常に苦々しい表情で、吐き捨てるように礼を云った。

「……いや、セブルス。ほんと久しぶり……」
「いつまで笑ってるのリーマス」
「事情はある程度聞いてはいたが、貴様が子供の世話とは世も末だな。片腹が痛い」
「そうか、もっと痛くなれ。そんで再起不能になれ」
「我輩にとって、貴様らは冷めたピザくらいの価値しかない。子供を教育するにふさわしいとは到底思えん」
「え、俺冷めたピザ結構すき」
「あーあのちょっと端が固いのがね」
「やだ、ピザは火傷するくらいがおいしいわよ」
「そんでおまえホントに火傷したらゴネるだろ? この前も……」

グルメと貧乏舌の瀬戸際のような会話を遮るように、スネイプはパンパンと手を叩いた。
注目、注目。

「生徒も送り届けたことだし、失礼させて頂きたいのだが」
「水くさいな、よければお茶でも……ゴメンやっぱ僕だめだ……」
「ルーピン、児童福祉局に連絡されたくなければ貴様はそれ以上喋るな」

素早く立ち上がったその後ろを、痙攣するリーマスと、マリゴールドがついて行く。本来ならば死んでも見送りたくない相手だが、足下のおぼつかない彼女を後ろから支えるため、シリウスも仕方なく続いた。

「今後このようなことがあっては困る。教師はボランティアではない」
「それはどうもわざわざお手数をおかけしましたうちの子が!すみませんでしたね!」
「……。君の保護者はいつもこうか?」
「まあサムタイムスそうです」

頷いた彼女を一瞬哀れんだような目で見て、セブルス・スネイプはフラットを後にした。

 

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