ときどき自分でもバカじゃないかと思うが、はっきり口に出してそう云われた。リーマスにだ(彼はときどき冷たいとシリウスは思う)。
仕事を途中で抜けて何をしているかと云えば、自宅のドアの前に立っている。もちろん、このあと引き返して続きをやっつけねばならないが、どうにも不吉なあの赤毛が頭をちらついて離れなかった。気になったらもう何も手につかないので仕方がない。
とりあえず、様子を見るだけ。ほんの一目。顔を見られればそれで。
「……ねえ何してんの。きみたち」
部屋はもぬけのカラだった。
やはり何かあったのか、あの双子絶対殺す、と思ってドアを開けると、隣人(兄)とはちあわせた。煙草を買いに行った帰りらしい。さらに彼曰く、連中は揃って彼の家(つまり隣室)にいるんだとか。
それも、
「トップオブザポップス見てる」
テレビ見てた。
しかも、できあがってた。
「あの、ウィーズリーくんたち……なにを普通に飲んでいるのかね?」
「大丈夫大丈夫。もうすぐ四月だから」
「ていうかシリウス邪魔、テレビ見えねえ」
よいしょ、と足を押しやられてよろける。思わず座ってしまったソファに、空のビール瓶やらピザの箱やらが散乱していた。カミソリと鏡が落ちてなくてよかったと、心から思う。
「マリゴールドはどこだよ?」
「あっちのソファで寝てる」
「はぁ!?」
「大丈夫、酒飲んだわけじゃないから。ありゃ眠くて電池切れただけさ」
首がちぎれそうな勢いでシリウスが部屋を見回すと、隅の小さいソファにマリゴールドが丸くなって寝ていた。すぐそばに隣人の弟が転がっていたのには一瞬ヒヤリとしたが、説教しようという気持ちはみるみる萎えた。子供はずるい。もうため息しか出ない。
飲むか、とどこからか取り出したギネスの瓶を兄が寄越してきたが、「これから仕事だから」と断った。今酒が入ればひどい状態になりそうだ。
「子守りといい隣人といい、俺って対人運に恵まれねえ……」
変人ばっかり、と嘆くと隣室に住む男は妙な顔をした。彼は知っているのだ、こちらの同居人にもじゅうぶんな変人が一人おり、ときどき尋ねてくるメガネのほうは筋金入りの変態だということを。
マリゴールドがここで寝ているのをリーマスが知ったら卒倒しそうな気がした。仕事から帰って一眠りしたら説教だ。たぶん、マリゴールドは泣く。
とりあえず、双子の飲酒だけはモリーには黙っておこうと思う。
双子が出したかっただけでした。あと眉毛兄弟……
TOTPは今はなくなっちゃった伝説の口パク番組ですが、だいすきです