marigold | ナノ



ぴっちりとなでつけられたブロンドに、嫌味なほどに爪先まで輝いた革靴。小脇に本を抱えモデルのように立っていたスローニー少年は、おもむろに唇を釣り上げた。
その嫌味な仕草すらもお上品。

「Hum,」

会うなり鼻で笑うなよ。

「低俗な痴話喧嘩が聞こるんじゃあな、本もろくに選べやしない」
「週末でもないくせに暇なんだね。うらやましいよ、マルフォイ」

ものすごく面倒くさそうに、しかし皮肉をつけ合わせにそえることを忘れないハリーは律儀だとはマリゴールドは思った。同時にとても器用だ。

「こんな道端でデートとは不憫なことだな、ポッター」

癪にさわる発音でベラベラと演説を続けるポッシュボーイ。かたや眉間にジリジリとしわが増えるメガネボーイ。BGMにカップルの痴話喧嘩。チュロスも奪われ、テンションは低空飛行である。

「そっちこそペットのパグ犬が見当たらないけど? あ、ごめんガールフレンドだっけ」

思わずマリゴールドがふきだすと、少年の額に青筋が浮かんだ。しかし、どうも云い返す言葉が見つからないらしく、高慢そうに鼻を鳴らして背を向けた。帰り際、「大体テメェどこ中だ?」みたいな一瞥を寄越して。

「……ねえ、アレ誰? わたし今メンチきられたよね?」

売られたのだから買うべきか、と追いかけようとするはマリゴールドの肩を、ハーマイオニーがとっさに掴んで止めた。いつの間にか停戦していたらしい。

「パブリックスクールの子でしょ。何かと公立の生徒には因縁つけて来るのよ」
「ふーん。綺麗な子ね、ムカつくけど」
「げっ、マリゴールドってあんなのがタイプなの? あれなら苺柄セーターのがまだましだ」
「いや、タイプじゃないけど」
「……ロン。しつこいわよ」
「何だよ!クラムの話なんかしてないだろ?誰が云ったよ?」
「ほら云った!今云った!」

停戦むなしく、再び戦いの火蓋が切って落とされようとしていた。

 

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