「…モモ、これはどういう…」

「あれ、そういえばマリーちゃ…」


私とモモの言葉が被ってしまったせいで、結局モモにどういうことか尋ねることができなかった。

モモが私の後ろを見て固まってしまったからだ。

つられて後ろを見ると、マリーという少女が警官隊の一人に質問攻めにあっていた。


「「うわあああああ!!」」


モモと目付き悪い人が同じタイミングで悲鳴を上げる。


「あ、あの馬鹿…!あれを返しに行こうとしたんだ!」

「うわわ…ど、どうします!?これ相当まずいですよね!?」

「ぷっくく…あぁ、あれが例の無精髭をぶっ叩いた電気アンマ!でもなんであんなもの…なんかのギャグ!?ひぃ…お腹痛、痛い!」

「お前は少し黙ってろ!」


猫目野郎の腹に目付き悪い人の拳が叩き込まれた。

…あの人、随分猫目野郎に対して暴力的だな。いいぞもっとやれ。


「だ、団長さん…マリーちゃんこっち指差してません…?」

「お、おいばかよせ…」

「う、うわぁ!!こっちに来ます!!ちょ…カノさん邪魔!!早く立って!!」

「キドに…みぞおち…殴られた…」

「おま…早く立て!ってああぁ…」


ここに来てようやく全員の名前が判明した。

目付き悪い人がキドで猫目野郎はカノというらしい。いや、今はそれどころじゃないんだけどさ…。


しかし、一人の警官隊が猫目野郎につまずいてから驚いたところを見ると、猫目野郎カノにつまずく前は私達のことは見えてなかったらしい。


モモが白い少女マリーの手を引いて走り始めた時、フロア全体から一気にざわめきが聞こえた。

どうやら人質達が動き出したらしい。

警官隊の視線が一瞬だけそっちに向く。そして再びこっちに戻した時には見えなくなったらしい。

警官隊の「き、消えた…!?」という動揺の声が聞こえた。


…これ、近くにいっても気付かれないのかな?


変な好奇心が私を刺激した。


「おいキサラギ!もうここにいるのはまずい!早く出るぞ!」

「は、はい!!あ…でも…!」

「…おいカノ!!キサラギの兄貴さんを担いでいけ!」

「えぇ?なにそれめんどくさ…くもないですね、すごい担ぎたい体してる。うん」

「カノさんそれはキモいです…ってフミ?…フミーー!!?」


モモは警官隊の目の前で手をひらひらさせている私の姿をみて、悲鳴混じりに私の名前を叫んだ。


「やばいよモモ。私、透明人間みたい。凄いねこれ」

「フミ!!なにやってんのもぉぉおお!!早く逃げるよ!!」

「ちょ、堂々と手を振りすぎでしょ。くくっ…キサラギちゃんの周りは面白い人多いねぇ」

「…おい!早くしろ!」

「あー…はいはい」


とりあえず一緒に行ったほうがいいかな。この場に残った方が面倒かも。

デパートから出たらすぐ離れればいいや。


シンタローお兄さんの携帯を回収し、白い少女マリーの手を引いて走るモモの後に続きながら、そんな事を考えていた。


片足突っ込む
((この時の能天気な私は、この判断が間違っていたなんて考えもしなかったのである))




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