「あー、なんかつまんねぇなこの時間。十五分にしときゃよかったか?」


ケータイを弄りながらでかい独り言をいう髭男。

まるで緊張感がない。この強盗は成功するとでも確信してるのだろうか。

…あーぁ、駄目だなぁ。

油断が一番の敵なのに。


とは思いつつ、何もできないのが現状だ。

まぁ多分横にいる猫目とモモ達がなんとかしてくれるんじゃないかな。

そんな気がする。


なんてなんとなくモモ達に目を戻すと、白い長髪の子が転んで電気アンマが髭男目掛けて飛んでいくのが…。

…あ、オワタ\(^o^)/


「「うわああぁぁああ!!」」


「っつ!」


モモと目付き悪い人の悲鳴がハモる。

飛んでいった電気アンマは髭男の後頭部に直撃する。

髭男が後頭部を押さえ、顔を歪めながら立ち上がり、そのまま近くにいた仲間を思い切り殴った。


「…何が、なんだか…」


電気アンマはぎりぎり落ちなかったようだ。

目付き悪い人が電気アンマを抱えて白い長髪の子に怒鳴っている。


「なんだいきなり…」

「くくっ…」


シンタローお兄さんがワケわからないと言うように呟く。

猫目野郎が声を押し殺したように笑う。


「え…?」

「…?あ、いや、ごめんごめん。あんまりにも可笑しかったもんだからつい」


どうやらお兄さんが猫目野郎に気付いたようだ。

そのまま会話を始める二人。


しかし私には二人が何を話しているかとかどうでもよかった。


…なんで、


なんで気付かない。


お兄さんもテロリスト達も人質達も、


どうしてモモ達の存在に気付いてない?


いや、見えてないの?


猫目野郎はどうやら気付いているようだ。

今この状況で笑っていられるのが証拠。


というかお兄さん、猫目野郎が縛られてないのに気付いてなくね?

…なんで?

気付いてるの…私だけ?

どうして…?


「あ〜…聞こえてるな?金を準備する時間を十分短縮する。よってあと十分だ。間に合わねぇなんて言おうもんなら、まずはこいつらの半分を殺す。いいな?」


ぼーっと考え事していたら話が進んでしまったようだ。

準備時間が短縮し、あと残り十分となっていた。

…さっきよりも減ってね?

さっきは十五分だったよな?

…あー、早く誰かなんとかしてくんないかなぁ。


「それと今のうちに言っとくが、金の受け渡し後、俺たちはヘリでここを去る。追跡等は止めといたほうがいい」


怖い人達のリーダーが追跡したら爆弾落とすと、警察達に告げた。

…マジか。

ここからだと私の家にも被害が出るじゃないか。

家にはお母さんもお父さんもいる。

…それは困るなぁ。

いよいよこっちも緊張感が出てきた。

その時。


「…んなのんびりしてる場合かよ!俺の家族だって死ぬかもしれないんだぞ!!」


お兄さんが、そう叫んだ。


その声にその場は静かになり、怖い人達も一瞬だけキョトンとした顔になった。

猫目野郎が何かを言ったのか。


なにがともあれ、これはマズイ。


リーダーらしき男が鋭く睨みながらお兄さんへと近付き、目線を合わせるようにしゃがみこんだ。


「てめぇは何だようるせぇな…」


マズイマズイマズイ。

この展開はよろしくないって。

リーダーが凄むのに比例し、お兄さんの身体がガタガタと震え始めた。


「おいおい震えてんじゃねぇか。さっきの威勢はどうしたんだよ!?」


リーダーはにやけながらお兄さんの髪を掴み引き上げる。

やめてあげて!将来はげちゃうよ!

…じゃなくて!


「ずいぶん貧弱そうだしよぉ…普段外にも出てねぇんじゃねえのか?てめぇみたいな引きこもりグズだったら死んでも誰も困んねぇなぁ?そうだろおい!」


いやいやいや、困りはしなくても悲しむって!

さすがにお兄さんの愚痴ばかり言ってるモモも悲しむから!


てかこのリーダー声うるせぇ!!


「…ろよ…」

「あ?なんか言ったかよ。小さくて聞こえねぇなぁ」


キッとリーダーを睨み付けたお兄さんの目は、しっかりとした意志があって、しっかりとリーダーの目を見ていた。


「お前みたいなクソ野郎こそ、一生牢屋に引きこもってろよ!」


「やっぱ君面白いよ…!最高」


猫目野郎がにやけた顔で呟いたのを目の端でとらえた瞬間、リーダーのすぐ後ろで大きいテレビが床に叩き付けられた。


音をたてて崩れる
((見れば、モモ達がテレビの下のスピーカーを倒すところだった。))




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