「…で、これで全部か?」

「はい。買い物客含め、このフロアのこちら側の人間全員です」

「へぇ。あ〜…休みだなんだで楽しいお買い物を満喫中だったろうに、残念だったなぁ。ホントついてないよあんたら」


本当についてなくて残念だよちくしょー。


私を連れて来た無精髭の男が、やつらのリーダーだったらしい。

なんだか横暴そうで自分の事しか考えてなさそう。


昔からそうだ。

私は他人の本質をみてしまう。


人の第一印象と本質は違うという。

適当そうにみえて誠実だったり、厳しそうにみえて優しかったり。

逆のパターンもある。

良い人にみえて悪い人だったり…。

その第一印象が、私にはみえない。

そして、他人の目を見れば嘘をついてるかどうかが分かってしまう。


人を見る目がいいとはいうが、これはそんな生易しいものではなかった。

他人の事を正確に見抜き、嘘も通用しない。

それはきっと、生きていく中ですごく辛いこと。

でも鬱にならずに過ごしていけたのは、人を選んでいたからだ。


本質を見抜いた上でどんな他人と一緒にいるか、どんな他人といれば平穏に生きていけるか。

また、本質がわかれば行動も推測できる。

誰が自分にとって不利な行動をとるか、自分にとって得になる行動をとるかを推測し、自分もそれに沿って行動を起こす事で平和に生きてきたのだ。


それは難しいように感じるが、物心がつく頃から見抜いていた私にとっては動作もないこと。


他に鬱にならなかった理由があったとしたら、私が他人に対して無関心だったからだろう。


つまり私は"事なかれ主義"なんだ。


…だというのにこの状況。

両腕は後ろに縛られ、怖ーい人達に囲まれている。その上お腹もまだ痛い。

最悪な状況だよね。興味ないとか言ってる場合じゃない。

まぁ、モモ(と愉快な仲間達-1)がどうにかしてくれるんじゃないかな。なんとなくそんな気がする。


…それにしても、さっきのは何だったんだろうか。


"後ろ!!"


"全員、コロス"


モモも無精髭も、そんな事は言ってなかった。口にださなかったはずだ。


なのに頭に流れたあれは…。


「13時。時間です」

「おう」


無精髭が携帯を取り出し、口を近付け開いた。


「あ〜テステス。お、聞こえてるな?」


建物のアナウンス用スピーカーから大音量で流れる無精髭の声。

その声は、十億円を用意しろだの受け渡しは三十分後だのと強盗らしき事を言うじゃないか。

十億ってなんだよ。デカすぎてまったく想像できないよ。なんかバカらしく聞こえるのは私が捻くれてるからか。


…あーしかし、すぐそばで記念写真を撮りだしたこの男はなんなんだろうか。

つかなんでこいつだけ縛られてないの。贔屓か。


…よく見たらモモと一緒にいた愉快な仲間達の一人じゃん。

あの時、唯一目が合ってしまった猫目の男がなんでここに?

まぁ今回もとりあえずスルーで。


「…あ、またあったね」

「…会いましたっけ?」


なんかよくわからないけど話しかけられた。


無関心が一番平和
((頼むから放っておいて))




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