無精髭の怖面男は私に近付くと襟を掴みこう言った。


「嬢ちゃん、そこで何やってんだぁ?」


"金が欲しい"


「いや、これ何かのイベントですかね。それならもう帰りたいんでシャッター開けてくれると助かるんですが…」

「そうだなぁ、これは人生最大のイベントになるかもしれねぇなぁ」


"地位が欲しい"


「へぇ、それはそれは素敵なイベントでしょうね。でも興味ないので帰らせてください」

「途中参加も退場も無理だ」


"だから、警察も買い物客どもも"


「…それは、残念な…」

「だからお前も来い!」


"全員、コロス"


「…っ!」


捕まれた襟をそのまま引っ張られ、無精髭に引きずられる形でシャッターから遠退いていく。


「っく、離、せ…!」


…あぁそういえば、モモ(と愉快な仲間達-1)はこの男には見えてなかったっぽいな。どんなイリュージョン使った分かんないけど、今はモモ(と愉快な仲間達-1)が頼みの綱だ。


「離せ、ってんだろハゲ!」


数歩、歩いたところで無精髭が立ち止まる。捕まれた襟はそのまま上にあげられた。


「っ、ケホッ!」


マジか、後ろ襟を掴んで持ち上げられたのは人生初だわ。


「随分威勢のいい嬢ちゃんじゃねぇか。だがなぁ、自分より強いものには従わないといけねぇ。じゃねぇと…」


無精髭の片足が上がる。その片足を私のお腹目指して…。


ドッ!


「っ!!」

「痛い目みるぜ」


無精髭に蹴り飛ばされた私は、そのまま人質が集まっている場所に背中から突っ込んだ。


「ッ!ゲホッ!ゴホッ!」

「おい、大丈夫か…!」

「ーっ、お兄、さん…」


どうやらシンタローお兄さんも人質として捕まっていたようだ。ちょうどお兄さんの近くに蹴り飛ばされたらしい。

…っあー…しかし。


「…痛い」

「お前…」


いやもうホント痛い。気絶した方がマシだわこれ。しかし悲しいかな、気を失うなんて事は一切なかった。

絶対痣になったよ。


「…音、気付かなかったのか?」

「音?音楽を大音量で聴いてたので…」

「マジかよ。結構な銃声だったのに…」


銃声…シャッターが下りる直前のあの音は銃声だったのか。

あの銃声の音が聞こえた瞬間に走ってエレベーターまで行けばよかった。そうすればこんな事にはならなかったはず…。


なんて事を考えている間に私もお兄さんも腕を拘束されてしまった。

腹の痛みもまだ退いていないというのに…。


イベント?いえ、本気です
(あー…ここで戦隊ヒーロー的なのが出てあのテロリストどもをぶっ飛ばしてくれないかな…)
(フミちゃん、頼むから帰ってきてくれ…!)




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