…とりあえず、ちょっと廊下に出てみようかな。

誰かに会うかもしれないし。


音を立てずに静かに移動する。起こしちゃ悪いからね。

…いや、もうカノあたりを無理矢理起こしちゃおうかな。


「…あれ?フミ?」

「うわっ…びっくりしたぁセトか」


いきなり後ろから声をかけるって反則だよね。しかも暗い所で。


「何してんスか?」

「いや…セトこそどうしたの?」

「オレはトイレにいった帰りっス」

「あ、そうなんだ。マリーは?」

「マリー?さぁ…もう寝てるんじゃないんスか?」


マリーのとこには行かなかったんだ。


「マリーの部屋に行こうとしたんだけど…寝てたら迷惑だよねー」

「…あ、フミ怖くて寝れないんスね」

「ゔ…実は、そうです…」

「へー。オレが一緒に寝てやるっスよ?」

「え、何その爽やかな笑顔。いや、遠慮しときます」


君の本性なんてとっくの昔に見破ってんだからな。

ほら、今チッて舌打ちした。


「じゃ、ここでちょっと話さないっスか?」

「うーん…まぁいいよ」


廊下で話し込む男女ってはたして絵になるのか。

…セトだけなら絵になるかもね。


「フミって化粧しないんスか?」

「化粧?化粧って嫌いなんだよねー」

「へー、なんで?」


暗いからよく分からないけど、セトはおそらく私の顔を覗き込んでる。

なんとなーく、そんな気配がする。


「化粧って肌荒れるし…私には過ぎた物ってゆーか、似合わないと思うんだよねぇ」

「…似合うと思うっスよ」

「えー?」

「いや、メカクシ団の女の子達って飾り気がないなぁって」

「…あー、そうかもね」


メカクシ団の女団員を思い出す。

キドにマリーにモモ、そして私。


「キサラギは可愛い服を着るけど、それってアイドルとしての時だけっスよね?普段の私服のセンスがないし…マリーは化粧という考えがない。フミは化粧をあえてしないし、キドは…あれはもう論外っス」

「論外って…あぁ見えて可愛いとこあるんだよ?」

「分かってるっスよ。でも…オレ達男としては、可愛いところを見たいってゆーか…普段とは違う面を見たいんスよね」

「…カノでも乗り移った?」

「…なんでそーなるかなぁ」


だって考えがもろカノっぽい…。

カノって…自分の変態を人に移すのか。


「でもマリーなら頼めばやってくれるんじゃない?」

「うーん…分かってくれないっスかぁ」

「?」

暗さに慣れた私の目は、諦めたような笑顔を浮かべるセトが写った。

…あ、なんか今の笑顔カノっぽい。


眠れない夜は
廊下でセトとお喋りしよう

(…なんかセトってたまにカノに似るんだよねー)
(え、あんな変態と一緒にしないで欲しいっス)
(うわ、ひどっ)




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