( コレの続き )



あの人の声も温かさも、感触も、体中に走る痛みも全て感じなくなった。眠りに落ちるように視界も意識も真っ暗になった。

気が付いたら草原にいた。遠くには山々がある。落ち初めた夕陽に厚い雲。まるで冬のような空の遠さ。だけど寒さは感じず、髪をなびかせる風が心地よい。
深く呼吸を吸い込むと清々しい空気が肺に入り込み体中に酸素が流れ込む。ゆっくりと落ちていく夕陽を何も考えずに眺めていると後ろから名前を呼ばれた。振り返ると同時に強く抱きしめられる。



「よかった 」



震えた声で、呟いたその声に私の涙腺が緩んだ。本当によかった、と ギュッと抱きしめてくるこの人の背中に震える腕をまわす。もう会えないと思っていた。目尻から涙が落ちる。


「こら、さん、」
「無事でよかった、」


コラさんは鼻を赤くしながら微笑み、私の涙を拭き取る。私は死んだ、コラさんも死んでしまったのか、と頭の中でぐるぐるぐるぐるめぐり回っていたが今のコラさんの言葉で理解した。ああ、そういうことか。微笑みながらコラさんの手を取り、歩きながらお話をしようと伝えれば驚く。


「名前?」
「私、コラさんと たくさんお話したい」


素直に私の気持ちを伝えると あまり理解していない様子だったが直ぐに微笑みながらそうだな、と言ってくれた。


「俺もたくさん話したいことがある。名前がいない間にいろんな事があったんだ、話しながら帰ろう。ローも喜ぶぞ。」


私は返事をせず ただ微笑み返す。自然と2人は恋人繋ぎをして綺麗な草原を歩き出す。コラさんはあの時私が死んだと思っていた、ローが毎晩泣いてて大変だった自分も泣きたいのに我慢してた等 いろいろ話してくれた。その後は私達が出会った時の話やドンキホーテファミリーにいた頃の思い出話に花を咲かせた。会話が終わると私は立ち止まり夕陽を眺めた。だいぶ落ちてきた。辺りも暗くなり初めている。コラさんも夕陽を細目で眺め綺麗な朝日だな、と呟いた。朝日、かぁ。


「だいぶ歩いたがずっと草原だな、それよりココどこだ?」
「コラさん」
「?」
「私コラさんに会えて幸せでした」
「名前?」
「私、コラさんの事 忘れない」
「何言ってるんだ」
「コラさん、私、死んだんだよ」


コラさんの目が見開かれる。直ぐにぐしゃりと顔を歪ませ下を向く。片手で顔を抑え やめろ、やめてくれ。と涙声で言うコラさんに私も少し涙目になる。泣くのをグッと堪えニコッと笑い もー、本当に泣き虫だなー。とコラさんの背中をさすると嗚咽が聞こえた。

泣き出したいと 私の唇が震える。


「なんとなく、わかってた」
「うん」
「わかってたけど、認めたくなくて、」
「うん、」
「俺は、も、どうすれば、」

顔を抑えてた手が離れてボロボロ泣いてるコラさんが露わになった。そんなコラさんを見て我慢できず私も泣いてしまった。出来るだけ笑顔を保ち、そろそろお別れだと伝える。


「いやだ、いやだ行かないでくれ」
「もう行かなきゃ」
「頼む、置いてくな」


縋り付くように私を抱きしめるコラさんの顔を両手で包み、目をしっかり見つめ、最期の言葉を伝える


「ロシナンテ、愛してる」




今までで1番 ぐちゃぐちゃで、ぶさいくで、愛しい、泣き顔。それが私の最後の記憶。








補足








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