ふと、気が付くと私の目の前には沢山の喪服姿のひとが並んで座っていた。斜め前にはお坊さんがお経を唱えている。ぼーっとその光景を眺めて前列に並ぶ人達にどこか見覚えを感じた。その人達が誰なのか、気付いてしまったとき体が震えた。歯が小さく、カタカタと鳴る。隣にある棺桶にゆっくりと顔を動かす。中にいる人を見てヒュッと呼吸が止まった。





「おかあさん、」





随分と老け込んだ自分の母親の死に顔が脳裏に焼き付いた。







ぱちりと目を開けると隣に座っていたコラさんが私の顔を覗き込んでいた。”だいじょうぶか?”と書かれた紙を見せてくる。今の夢のせいで頭の中が真っ白だ。返事もせずにコラさんを呆然と見ていると新たに文字が書かれた紙を見せた。

”ないてる”

あぁ、私泣いてるんだと理解した瞬間 さっきまで真っ白だった私の頭の中にあの夢がフラッシュバックする。悲しさがドッと波の様に押し寄せてきた。さらに涙が溢れてくる。顔が歪み下唇を噛み締め涙を出さないように我慢するが無駄だった。腕で目を隠し、大丈夫です。と呟くとコラさんは私を自分の胸元に押し付け背中をポンポンしてくれた。嗚咽が止まらない。背中に腕を回しギュッと抱き着くとコラさんが少し固まる。だが直ぐに頭を優しく撫でてくれて、その行為に更に涙が溢れた。暖炉の火の音と私の啜り泣く声だけが部屋中に静かに響く





私がいなくなって一体何十年経ったのか、それ程にあの夢に出てきた 私の家族や母は老け込んでいた。


もう私の帰る場所はない。








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