鏡よ鏡
「スレイ。これはいったい……?」
「これ? 鏡だよ」
「そうだけど。どうしてこんなところにあるんだ?」
「それは……」
不思議顔のミクリオに、スレイは言った。
可愛いミクリオの姿を、映し出すためのものなのだ、と。

世界が浄化され、天族が人間と普通に暮らすようになった現在は、天族が映る鏡というものも、普通に販売されている。
最初、宿の部屋の入口近くに置いてあったこの鏡を、スレイはわざわざ、ベッドの側面に移動させていた。
「へぇ……、ずいぶんと大きいね。僕より丈も幅もある。装飾も立派だ」
ミクリオが興味を引かれて、それに近づき見上げていると、後ろから大きな手が伸びてきて、ひょいと抱き上げられた。
「うわっ……、何をするんだ。せっかく見てたのに」
口をとがらせるミクリオを、まあまあ、と宥めながら、スレイはそのまま、すぐ後ろにあるベッドの上に座らせた。件の鏡と向き合うようにして。
そして、上衣の合わせ目に手をかける。
「さ、服脱ごうか」
「服? なんで?」
「言っただろ、ミクリオの可愛い姿を映すんだ、って」
「可愛い姿って……、あ……!」
上半身をはだけられ、胸の淡い色づきを指できゅうと抓まれて、ミクリオは初めてその言葉の意味を理解した。
……スレイは自分を、この鏡の前で抱こうとしているんだ、と。



「ほら、ミクリオ、凄いな。ここ、もうこんなにして」
「あっ……! や、やだ、スレイ……!」
両の脚を鏡に向けて大きく開かされ、いつもスレイを受け入れている場所を、ぐいと拡げられる。
暗くしたら見えないからと、部屋の灯りはつけたまま。
映し出されたそこは、言葉とはうらはらに、ぱくぱくと小さな口を開けて、物欲しそうに蠢いていた。
そのあまりにも淫らな様子を見ていられずに、ミクリオは手のひらで顔を覆う。
「そ、んな……! やめ……!」
「どうして?」
「は、恥ずかしいからに決まっている……、ひっ、ああっ!」
「ほら、指も入った」
スレイの太い指が一度に二本侵入し、ミクリオはビクリと跳ね上がった。
だが、長い年月をかけて、すっかり慣らされたそこは、難なくそれを受け入れる。
「どう? どんな感じ?」
その指を動かされるたび、はしたない音が耳に響き、ミクリオは耳をも塞ぎたくなった。
だが、スレイはそれが嬉しいようで、興奮を隠さない声が降ってくる。
「本当にすごいな……、こんなに濡れて」
「やだ、いやだ……っ」
こんなときは、水の天族である自分の体が恨めしい。意識しなくとも、そこは勝手に潤ってしまう。しかも、普通の量ではないほどに。
適度な粘度を持ったそれは、スレイの恐ろしいほど巨大なものを受け入れるためには、必要不可欠なものではあるのだが。

「さあ、そろそろいいか。今度はこっちを入れるから……、ちゃんと見てるんだぞ」
スレイはそう告げると、ズボンの前を寛げ、大きく起ち上がったものを取りだした。
勢い良く出てきたそれは、ミクリオのものとは到底比べ物にならない、色も形も全く別の器官なのではないかと思えるような姿をしていた。
いっそ凶器と呼んでもいい、その熱く硬い先端が、ミクリオの、小さな入口に押しあてられる。
「んっ……、大きいな……」
幾度となく、それこそ数えきれないほどの回数を受け入れているくせに、つい怖気づいて眉根を寄せると、スレイは小さく笑って、いつもちゃんと飲み込んでいる、と教えてくれた。
そうなのか、と他人事のように思う。
それもそのはずで、普段は挿入直後から、意識も飛ぶほどに乱されてしまっている。だから、どれほど深くまで貫かれているかなど、結局はわからなくなってしまうのだ。

そんなことをぼんやりと考えていると、挿入が始まった。
背後から抱えられ、大きく脚を割られ、さらにそこを、これでもかと拡げられる様を見せつけられながら。
薄く開いた瞼の間から、ミクリオは、鏡に映るその光景をじっと見つめる。
なんて格好なのだろう。
我ながら目を背けたくなるが、そこをぐっと我慢する。
スレイの、なめらかなカーブを描く先端は、最初は、わずかに開いた穴に、はめ込まれるように。
そして、ゆっくり、こじ開けるように。少しずつ少しずつ、ミクリオの中に飲み込まれて行く。
ことさらゆっくり進められる挿入は、肉体的にも視覚的にもあまりに刺激が強すぎて、ミクリオは小さな子どものように、嫌々をしながら泣き声を上げた。
しかし、それはスレイの興奮をよりいっそう高めるだけだったようだ。
一番太い部分が、さらに大きく膨れ上がり、狭い入口を、これでもかと開かせる。
その部分が通過する際は、恐怖と動揺で、悲鳴にも似た声を上げてしまった。
「あ、あー……ッ! 怖い、スレイ……っ!」
が、そこさえ通ってしまえば、あとは難しくなかった。
ずるずると、根元まで、それはミクリオの体内に全て収まりきってしまった。
「は……、いつもよりすごい声出して。興奮した?」
スレイに言われて、初めて気付く。
「そんな……、僕は……、そんなに……」
「ああ。あんなイヤラシイ声、出せたんだな。もう高位天族なのに。女の子みたいに、可愛い声で泣きじゃくって」
「あ……、あ……」
「身体だって、ほら。こんなに大きな口を開けて、びっしょり濡らして。俺のものに、ぴったり吸いついてきてる」
堪らない、と耳元に欲に濡れた低音が響き、ミクリオはひどく混乱した。
精神的な羞恥に加え、目の前の鏡には、涙ながらに、しかしどこか恍惚とした表情でスレイの巨根を咥え込んでいる自らの姿がある。
そのうえで、白く細い体を、スレイの逞しい腕に預け、だらしなく脱力した格好は、淫乱としか表現できないようなものだった。
「い、嫌だ……、僕は……っ」
「泣くなよ。そんなに泣かれると……、もっともっと、泣かせたくなる」
「う、あぁ……!」
それでも涙を止めようもないミクリオは、興奮しきったスレイに、めちゃくちゃに犯された。
そのまま、身体を持ち上げられては落とされてを繰り返した後、背後からベッドに縫いつけられて、激しく深く貫かれ。
やっと中で達したと思ったら、抜く間も無く、横向きに返されて、挿入部がよく見えるような格好で揺さぶられ。
その全てが、立てかけられた鏡によく映るようにされる。
自分のそこが、あんなにも拡がってスレイを受け入れているのも。
抜かれた際、そのままの形でしばらく口を開けているのも。
そこから、放たれたスレイの体液が、とろとろと流れ出ているのも。
全部明瞭に見えてしまい、ミクリオはただただ、泣きながらそのすべてを享受した。


「ごめん、ミクリオ! 悪かった!」
翌朝、シーツに頭を擦りつけんばかりにして謝るスレイを、ミクリオは憔悴しきった目で見つめた。
昨夜は、ここ数年で一番、激しい交わりになってしまった。
悪いが、しばらくは起き上がれそうもない。
それでも、必死に詫び、甲斐甲斐しく世話をしてくれるスレイが、やっぱり心底愛しくて。
「……いいよ。僕も、嬉しかったし」
ミクリオは力なくほほ笑むと、スレイの頬をそっと手のひらで包み込んだ。

それにしても、あそこまで激しく求められ、あれやこれやと与えられては、それ相応の加護を返さないわけにはいかない。その加護は、スレイのためにも、そしてもちろん人の子のためにもなるわけで。
この調子では、そう遠くない未来、また天族としての位が上がってしまいそうだと、ミクリオはまだどこかぼんやりした頭で、思いめぐらせた。


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