2 | ナノ




◆見せつけではないんです(みっくす様より)

沈みかけた太陽が二人を照らした。
夕焼けで半分だけ暗くなった互いの顔。
綺麗だな、なんて互いに互いの顔に見とれて頬を包む。
名を確認するように呼びあう。
もう一度。

「アイク…」

「セネリオ…」

髪がさらりとセネリオの頬にかかり、それすらいとおしむように指で払う。
名を確認するように呼んで、もう一度。

「アイク…」

「セネリ」

「しつけぇ」

「「痛ぁああああ!」」

シノンに頭を掴まれて額を強打、仲良く抱き合ってゴロゴロ転がるものだから余計にイライラした。
サッカーボールでも止めるように足で踏み止める。

「アイク…僕を庇ってシノンの足蹴に…!」

「セネリオ…俺はお前のためにならシノンごとき大した障害じゃない…」

「やっぱり転がってろ」

げしっと苛立ちを込めた蹴りに二人は坂を転がり落ち、盛大に川に突っ込む。
想像してほしい。
坂を抱き合いながら転がるカオス極まりない二人を。
シンクロ並みの素晴らしいタイミングで二人は顔を出した。

「なぜだ…
俺はただセネリオに愛の言葉を囁いていただけなのに…!」

岸に上がり、四つん這いで地面を叩く。
これでも本人はいたって真面目に言っているのだが、傭兵団にとっては鬱陶しいだけなのであって。
高速で飛んできた杖が頭に直撃し、再び川の中に落ちる。

「お兄ちゃんごめんね、何か手がすべっちゃって…」

回転した杖をキャッチ、ミストはひと振りして血を払った。
流されていくアイクに手を伸ばしてセネリオは叫ぶ。

「アイクぅううう!
僕を残して逝かないでくださ」

優しいミストは同じように殴ってあげた。

「お帰り二人共…
…何でそんなにびしょ濡れなんだい?」

タオルを渡しながらオスカーが問うと二人は誇らしげな顔をして胸を張った。

「愛の証」

「です」

その胸に鉄拳をくらい、ガクリと膝をつく。

「ノロケも大概にしようか」

冷静につっこみを入れてオスカーは台所に戻っていった。
冷たい傭兵団にしょんぼりしつつ痛みにほふく前進で進みながら会話を続ける。

「なぜ…こんなに酷い扱いを…」

「俺はセネリオへの愛を唄っているだけなのに…!」

それが地雷になっているとは知らず、背中にどすんとボーレが乗る。
「ぐぎっ」と間抜けな声を上げてぐったりとした。
アイクぅううう!と叫んだセネリオの背中にも、とすんとヨファが乗る。
負けるものかと震えながら身体を支えた。

「ボーレ、今日のご飯何か知ってる?」

ズルズルと呻き声を上げながらほふく前進で二人は地味に進む。
床が水浸しになっているため、また誰かに怒られそうだ。
うーん、と少し考えてどーせ肉だろと呆れ調に返した。

「今日は野菜がメインだって!」

ヨファの言葉が頭の中でエコーする。
野菜がメインだって…野菜がメインだって…野菜が…メインだって…野菜…が…

「…俺はここまでのようだ」

「アイクぅううう!」

動かなくなったアイクから降りて珍しく仲の良い兄弟は去っていった。
アイクに呼び掛けるものの「あー」やら「肉…」としか返事がない。
魂を抜かれたがごとく真っ白になる彼に最後の手段を使った。
パチンとマントのベルトを外す。

「では僕を食」

「セネリオ危なーい」

薬草の入ったカゴがドフッと頭に直撃し、中身をぶちまける。
嫌に抑揚のない声に無言でキルロイを睨み付けるとカゴを投げ返した。
素晴らしいキャッチと俊敏性に戦うときもそれぐらい素早ければいいものをと内心毒づくが、そんなことを知らぬ本人は鼻歌混じりに薬草を拾う。
そして小さな桃色の花を渡した。

「じゃあね」

ホウセンカ。
花言葉は"私に近寄らないで"。

「誰もあなたになんか近寄りませんよこの」

「キルロイさんいじめちゃダメー!」

我ながら絶好調の剣の冴え!と満足げに流星を放ってからスキップルンルンでキルロイのもとへ駆ける。
ぐったりと干からびた二人にガトリーはまたか…というような目で見て避けていった。
そして水浸しの廊下を見て赤毛を逆立て鬼と化したティアマトが雷を落とすのは間もなくであった…



end





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forever green、みっくす様から5800hitキリリクを頂きました!!

す…素敵です(´∇`!!!

いつもみっくす様の文章を読んでニタニタしていたので…幸せです!!アイセネだ…へへへ(´`

みっくす様、5800hitおめでとうごさいます!!アイセネ文、大切にしますね!!

これからも頑張ってください!!


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