真夏の夜の夢








最初は楽しかったんだ。
いつもは見られないような、
隊長方の醜態を見られると。







「こんな格好でもしてねぇとさ、俺を覚えらんねぇっつうんだよ」


うん、うん、と真剣を装って必死に震えを抱きしめる。体育座りでイゾウさんの悩みを聞き始めたら、思いのほか内容がうじうじしていて、込み上げる爆笑を殺すために私はずっと足のつま先を揺らしていた。



「イエーイ!」
「まーてよおーい」


そして素っ裸で走り抜けていったのは多分サッチ。それを追って…今転けた素っ裸はマルコ。


もう無理だった。

腹が引き攣る程の勢いで笑い倒した。
三角に折り曲げた体が上下に弾んで、体勢が崩れていく。



「お前聞いてないだろ?俺は真剣に」

「もう…うじうじしないの、鬱陶しい。いつものどエスがいいよ?元気出して?」

「うん。」



あ、だめ、震える。



「…というな、理由であったとしたら面白ぇな」

「嘘かい」



もうどうなってるの。
皆ストレス溜まってるの?

ビスタおじ様は、持ち込んだ花の花弁を全部、一枚一枚うっとりとむしってる。一人でも、相手がいなくたって楽しそうだ。この島には酒が美味くなる花があると聞いたが、まさかこんな効能もあったとは。


「やや、君も浮かべるがいい。美酒は皆で味わおうじゃないか」


そしてこの人が犯人だったのかと。
今もセーフな仲間達にその花弁を無理矢理勧めている。くそ、犯人がこの人じゃあシラフに戻っても責めようがないじゃないかと諦めの溜息を一つ。でも、まぁ、ネタにはなるか。現に楽しいし。



「***ー。」

「はーあーいー」


あーそーぼー、と子供のような言い方で名前を呼ばれて、そのまま笑いの余韻を残したテンションで返事をする。るんるんと歩いて来たエースもやはり盛られたか、顔付きから凛々しさが抜けていた。


「イゾウの相手終わったか」

「うん、終わった終わった」


なっ、なんだとーう。とヨレヨレ倒れ込むイゾウさんはそのまま隣で寝に入り、本当に終わってしまったわとあっけ無さに笑う。


「じゃあ次俺な」

「馬鹿だねぇ飲まなきゃ良かったのに。さして強くもないんだから」

「んーーな事ねぇよ」


伸ばした足にスルーインしたエースの頭がくすぐったくて少しびくっとなったけど、あまりの自然な行動でその違和感も流されていった。水にはもう届かないし、暇そうにする手元には髪があったから何となくヨシヨシと撫で付けて、特に見つめる訳でもなく遠くを、皆の醜態を眺める。


すると突然、
虫が足を這う様な感覚。
その気持ち悪さの原因を慌てて探せば、なんと。エースの舌が私の膝を舐めていた。


「っ…やあ!!!ちょー、!!何してんの馬鹿なの?!」


「やっべぇ。***超可愛い」


突き飛ばして舐められた場所を擦りまくり、睨み付けてやるけども、エースの目は完全に瞳孔が開いていて。一番質が悪い奴を見つけた私は、一目散に最終手段である親父の元へ逃げ出した。





「もう!!あんなもの持ってきて!!本っ当に…!親父もなんとか言ってよ!!!…………親父?」




そして私が、大きな盃の中で揺れる花弁を見つけるのは、軽快な笑い声に乗せ「パパですよグララ」と、ジョリジョリを通り越した頬ずりをされてからの話だ。



【真夏の夜の夢】



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