おむすびころりん。


偉大なる航路のお料理コンテスト!
せ、僭越ながら実況はコビーがやらせて頂きます…!
本当は嫌なんですよ、嫌なんですよ…!

いくらここが特殊区域で戦闘も捕縛も禁止だからといって、数多の海軍や海賊が集まってるんですよ?!問題が起こらないわけないじゃないですか…!センゴク元帥とガープ中将の言い付けだから仕方なく…。



「ブツブツ言わずに働いて下さいカス」
「か、辛口ですね。***さん…」


あ、この方は審査員兼試食係の***さんです。
ガープ中将付きの事務官の方で、黙っていれば 、その…か、可愛らしいのですがなんと言うかちょっぴり辛辣で…ぼ、僕はどんな***さんでも素敵だとは思いますけどね!
と、とにかく参加者の皆さんの所に行って参ります!


「えーと、まずはチーム三大将ですね…っ、」



ひぃぃ…!なんなんですか、なんなんですか…!
どうして皆さんギラギラとした目で僕を見るんですか!
これはあれですか?!下手な実況したら基地に戻った時に背後に気を付けろとかそんな意味合いが込められてるんですかね?!


「で、では早速…。カレー…?でしょうか」
「それ以外にねぇでしょうよ」
「ク、クザン大将…!…ぶフゥッ」
「お〜笑われてるよォ〜」


うわぁ…、クザン大将がエプロン…とか若干引いていたらその横にいるボルサリーノ大将の姿に思わず吹き出してしまいました。だって割烹着ですよ?!割烹着…!更には頭にタオルを巻いたサカズキ大将までいて、もう…!
とりあえずここは太股をつねって耐えるしかなさそうです。


「海軍カレーだよォ〜」
「…トッピングは海軍ハンバーグじゃ」
「ま、海軍が作ったら何だってそうなるわな」
「クザ〜ン、それ言ったらダメだよォ〜」
「…あらら、まァいいか」


な、なるほど。
何の変哲もないカレーやハンバーグでも『海軍』と付ければなんだか豪華そうですね!と誉めたつもりだったのに、ギロリと三大将から睨まれました。…ちょ、ちょっと覇気混ぜるのやめて欲しいです。


「普通過ぎてつまらん!次!」
「ぎゃあっ、***さん声大きいです…!!」


***さんの率直過ぎる感想に、三大将の顔がひきつっているのがよく見えます。気のせいかも知れませんが、何だか僕に死亡フラグが立ったような…。
と、とにかくこの場にいては身がもたないので、次のチームに行きたいと思います……はぁ、胃が痛い…。



「海賊エリアですね…」
「よォ!コビーじゃねぇか!」
「ルフィさん…!!参加してたんですか?!」
「当たり前だろォ、メシが食えるからな!」


海賊エリアなんて気が滅入る…と思ってましたが、見知った顔を見付けて一安心です。麦わらチームのルフィさんはお料理コンテストの意味を履き違えているみたいですけど、まぁルフィさんらしいと言えばらしいので気にしない事にします。


「これは…随分と豪快ですね」
「肉が一番うめぇに決まってる!」
「おら、くそゴムどけ」
「あぁ、こちらがメインですか!」
「さぁ海軍のカワイコさぁぁん、召し上がれぇぇ!」


調理台に並ぶのは骨付き肉の丸焼き。
確かに美味しいのはわかりますけど、これじゃコンテストの意味がないんじゃないだろうか。と苦笑していたらサンジさんが別の料理を並べ始めました。
ルフィさんの麦わら帽子を型どったオムライスに、じゃがいものパイユ、デザートにはみかんシャーベット。なんとも豪華で美味しそうな…!!


「では***さん、召し上がって下さい!」
「てめぇの目は節穴ですかすっとこどっこい」
「ええええ?!」
「何を食べろと言うんですか、エアー試食ですか」


この人実は僕をいじめたいだけじゃないだろうかと思ってしまうくらい、***さんの言葉が突き刺さります。だけどもう昔の僕ではないからこれくらいじゃへこたれません…!!
***さんの言葉にもう一度振り返れば、並んでいた料理は跡形もなくきれいさっぱり消えていました。
その横には勿論、頬と腹を膨らましたルフィさんがいて…。
あ、サンジさんが発狂した。

と、とにかく料理がないのなら審査は出来ないので
残念ですが麦わらチームは失格となります。
とばっちりが来ない内に次のチームを見に行かないといけないですね。



「ウルージと愉快な仲間達…チーム?」


なんかもう、嫌な予感しかしないです。
だってこのウルージってあの怪僧ウルージですよね、超新星の…!!それが愉快な仲間達って…。
あそこに見えるのって魔術師とキャプテン・キッドじゃないではしょうか…あぁ、憂鬱だ。


「さぁ、召し上がるといい!」
「ヒィッ!」
「空島豚と黄金卵の他人丼です」


ニコニコ笑顔を崩さないまま他人丼を置いた怪僧。
うわぁ、卵がふわふわとろとろで輝いてる!お肉からも香ばしいような甘いような凄くいい香りが漂って来ますね!
それは***さんも感じた様で瞳を輝かせながらお箸を握り締めて、勢いよく他人丼をかきこみ、そして悶絶した。
…え、悶絶?


「…痛い辛い甘い不味いぃぃぃっ!」
「***さん?!どうしたんですか?!」
「なっ、そんな筈は…!!」


怪僧は笑顔のまま冷や汗をかいて『私の空島特製他人丼が不味いわけなかろう!』とかなり焦っていましたが、何か思い立ったのかキャプテン・キッドと魔術師に詰め寄っています。


「お主達、何をなさった!」
「あァ?刺激が足りねぇからタバスコ入れたんだよ」
「…練乳を入れて優勝する確率72%と出ている」
「おーおー好き勝手味付けなさる……!」


ぎゃーぎゃーと一触即発状態の彼らはほっといて、未だ転げ回っている***さんに水を飲ませる。こんな時ですけど涙目の***さんって素敵だなぁ…可愛いなぁ。


「…酷い目にあいました」
「大丈夫ですか?」
「全然愉快じゃないです、よって失格!」


ぷくぅと頬を膨らませながら、失格!と彼らを指さすと最後のチームの元へと***さんは歩き出した。通り様に『あいつら会場出たら覚えてろ…!』と恐ろしい声が聞こえたのは気のせいって事にしておきます。



「うわぁ…白ひげチーム……」


正直、四皇には関わりたくないです。出来たら七武海も。そんなオーラが出ていたんですかね、センゴク元帥から物凄い視線が飛んできました。怖いです…怖いです…!!


「…えぇと、料理はどこに?」
「サッチさん特製をとくとごらんあれ!」
「…っ、」
「サッチてめぇ…!!」
「あは、あははははは…!!」


リーゼントの、確か四番隊長ですかね。
とにかくリーゼントの男性が自信満々にプレートを出した。
『地鶏のソテー、丸ごとパイン添え』と笑いを噛み殺しながら。それを見た僕は先程と同じように太股をつねって咄嗟に耐えたのに、***さんは膝をパンッパンと叩いて大爆笑しています。

だってこの料理、間違いなく不死鳥マルコを模していますもんね、笑わないわけがないですよね?!当の不死鳥の額に青筋が入ってピクピクしてるのは僕のせいじゃないですよね?!


「これはどーゆー意味だよい!」
「わかってねぇなぁ、マルコ」
「あァ?!」
「料理コンテストっつーのは遊び心も大事なんだよ」
「…チッ」
「ほら、頼んどいたアレ出してくれよ」


渋々納得させられたと言う感じの不死鳥にアレを出せと頼めば、何か企んでる様な悪い笑みを浮かべて調理台の下からソレを取り出して、***さんはおろか、不本意ながら僕の腹筋まで崩壊への道を辿る事となりました。


「おいぃ、マルコ!おれは米粉の丸パン頼んだだろ?!」
「…コンテストは遊び心も大事なんだろい?」
「ぐっ……」
「も、もうダメっ、共食い!あはははは!!」


不死鳥が取り出したソレは、もう見事なまでにまるっと太ったフランスパンで。どう見たってリーゼントだと思うんです。笑わないわけがないでしょう…?!***さんなんて、もう地面を転げ回って笑っていますもん。


「と、とにかく味は確かだから!」
「***さんとりあえず食べてみて下さい!」
「ひーっひーっ、お腹イタイ!あれ?ないですけど」
「え」


あぁやっぱりか。
共食いは別にしてなかなか美味しそうだとは思っていたのに、ちょっと目を離した隙に料理は忽然と姿を消していて、その横では火拳のエースがもごもごと咀嚼をしていた。


「…料理消滅の為、失格です」
「はぁ…」


***さんの言葉と共に、審査終了の銅鑼が鳴らされてお料理コンテストが終わりました。これから先は優勝を決めるだけなのですが、まともな料理がなかった様な気がします。


「***さん、どうしますか?」
「あれで優勝を選べと言うんですか?」
「…ですよね」
「今回は該当者なしです」


該当者なし、そうマイクで叫べば会場にどよめきが起こりました。妥当と言えば妥当ですが、参加者達の鋭い視線がチクチクと僕に刺さっているんですよね、僕が決めたわけじゃないのに。

そんなこんなで、波乱だらけだったお料理コンテストは幕を閉じたのでした。


「コビーさんお腹が空きました」
「あっ、で、ですよね、ちゃんと食べてないですもんね」
「リカさんのおむすびが食べたいです」
「えっ、まだいますかね、見てきますね」
「よろしくです」


給仕の為に基地からリカちゃんが来ていましたが、定時はとっくに過ぎているからもしかしたらいないかも、などと思いつつも慌てて裏へ回る。
案の定そこは人ッ子一人いなくて、あぁどうしようと肩を落としながら考える。
こうなったら仕方がない、ですよね。



「お、お待たせしました!」
「…ぶさいくおむすび」
「ススススミマセン…!リカちゃんもういなくて」
「でも、おいしいです」
「…え?」


リカちゃんがいなくて、悩んだ挙げ句に自分でおむすびを拵えた。慣れていないから形は歪だし正直あまり美味しそうではないソレを、***さんは微笑みながらもぐもぐと食べた。


「…隠し味は、愛情ですか?」
「はいっ、えっ、いやあの…ちがっ!」
「違うんですか」
「いや、違っ…わないです!!」
「ふぅん、なら裏の優勝はコビーさんですね」


ふにゃりと、見たことないような柔らかい笑みを浮かべた***さんは『賞品は私ですけど、いりますか?』と呟いて僕の目を覗き込んで頬にちゅっと唇を落とした。

一瞬何が起きたかわからなかったけれど、次の瞬間僕は***さんを抱き上げて走り出していた。後ろで参加者や見学者、センゴク元帥が何か叫んでいてガープ中将に至っては至極楽しそうに囃し立てているけれど、僕の耳には届かない。

なんせ、賞品を大切に持って帰らなければならないのだ。
他に構っている暇はない。
とりあえず、おむすびは最強って話です。




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