王様の耳はゴムの耳!
「どしたのルフィ」
「んー」
能天気な我船長が珍しく悩んでいると思えば
なんとも気の抜けた返事が返ってくる。
「おまえら、悪ィちょっと集合」
ヨシッと気合いを込めて立ち上がって、てんでバラバラに好き勝手行動しているクルーを集めて話し出した。ルフィがこんな顔してる時って大抵ろくな事がないんだよねーなどと考える私の推理は見事正解してしまう。
「まぁ、なんだ。おれやっぱ石油王になるわ」
「は?」
「え、ちょっとルフィ頭でも打ったの?!」
「巨人のおっさん達の島で湧いてたからよ」
いきなりこの男は何を言い出しているのだ。
今までさんざっぱらに海賊王になる!と私達を振り回していたのに寄りによって石油王になるとかなんなの?バカなの?
それに納得していないのは私だけじゃないらしく、ゾロが眉間に皺を寄せながら呟いた。
「てめぇ、石油王なんかになったらおれはどーすんだ」
「世界一の剣豪になるんだろ?」
「…おう」
「石油王は色々狙われるからよー」
だからボディーガードしながら名を挙げればいいんじゃねェか?と飄々と語るルフィに、ゾロは呆気に取られた様に頷いた。頼りにならないな!
「ちょっと!私の海図はどうなるのよ!」
「私も困るわ…」
「ナミにロビンもッと言えー!」
うちの船の鬼女二人に言われたらルフィも諦めるんじゃないかと思ったのに、思ったのに…!
「ナミ、おまえバカだなー。石油王は今よりもっと金持ちになるし航海だってし放題だぞ?それにロビンも!今よりもっと情報がくるんだ」
「「…」」
まるめこまれた!
鬼女二人がまるめこまれた!
更に口を開こうとする残りのみんなに、ルフィは次々に畳み掛けていく。どこで覚えたんだ、そんな話術…!
「キッチンだって今より充実するし、薬だって色んな物が手に入るし、何より危険がすくねぇぞ」
うわぁ…!
全員何だか納得してるじゃんこれぇ。
「わ、私は反対だからね!」
「なんでだよ」
「石油は臭いからイヤ!」
「えー」
***が言うなら仕方ねェなァと、ぶーたれながら渋々納得したルフィに安堵すれば、またもや突飛なことを言い出した。
「じゃあカジノ王でいいよォ」
「しねくそゴム」
「ムカッ、失敬だぞ!」
「カジノ王も却下ですう!」
ブツクサと文句を言うルフィをよそに、いい加減にしろの意味を込めて拳を振り上げれば頭を抱えて叫んだ。
「じゃあモナ王で!」
「…」
「スパ王!」
「アンタ、それが言いたかっただけ?」
何かバカらしくなってきた。
その後もギャンギャンと騒ぎ続け、結局どっかの王様になるって事なったみたい。
好きなモンの王になりてェ!と譲らないから私が折れた。
「よーし、海の王に、おれはなる!」
「…海賊王でいいじゃんよ、もう」
裸の王様にでもなっとけ、バーカ。
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