それは何でか知りたいかい?



「マルコ、重いよ…」
「貧弱だねい」


部屋で必死に書類を纏めていれば、急に重くなる背中とそれに比例した熱が体中を襲う。振り向かなくたってわかる。犯人はマルコ。


「じゃーまー」
「ちったぁ構えよい」
「なぁに?寂しいの?」
「ああ」


首に腕を回して背中に覆い被さるマルコ。
無視して書類を続ければ
『なぁなぁ』『よいよい』などと。
耳に息を吹き掛けたり囁いたり大忙しだ。


「寂しいよいって言ってみて」
「寂しいよい」
「ぶぅっ」
「失礼な奴だよい…」


***が言えって言ったんだろい、
不満そうにブツクサ文句を言うマルコ。
これが本当に一番隊隊長なのか、不死鳥マルコなのか。


「なぁ***」
「もう、なぁに?」
「ちょっとだけ抱き締めろよい」


なぁなぁ、ちょっとだけ。
まるで子犬か何かが尻尾を振るみたいに擦り寄って来て、ちゅ、ちゅとほっぺにキスの嵐がうるさい。


「ちょっとだけだよ?」
「ぎゅーっとだよい、お前ぇの事しか考えられなくなるくらい」
「はいはい、ぎゅー」
「…ぎゅー」
「もうすぐ終わるから待っててね?」
「わかったよい」



マルコは甘えん坊だ。
私の前だけだけど。
普段はちょうクール。物凄く。
周りが凍り付くんじゃないかってくらいにクールで、気の抜けた姿なんて誰にも見せない。むしろ怖がられてる。


「ちょっと、埃立つでしょ」
「よいよーい」
「…全くもう、」



待ってろと告げれば、
勝手に私のベッドに上がりうつ伏せになる。
そのままの体勢でご機嫌よろしく、両足を交互にパタパタさせるもんだから、可愛いったらありゃしない。



「…視線が痛いんだけど」
「早く終わらねぇかなと」
「そんなに構って欲しいの?」
「んな当たり前の事、聞くんじゃねぇよい」
「構ってよいって言ってみて」
「構ってよい」



気付かれぬように、くぅぅっと身悶える。
なんでこんな可愛いの。おっさんの癖に。

だいたいマルコは昔からそうだ。
気付いたら私の部屋にいるし、
人を背もたれにして本読んだりするし、
マルコが寝てる間に腕から抜け出せば、部屋中探して不安そうに名前呼ぶし(***…?とか言いながら引き出し開けるとか反則でしょ)とにかく甘えん坊なんだ。



「…マルコってさー」
「ん?なんだよい」
「何でそんなに甘えん坊さんなの?」



書類もある程度片付いたからマルコに向き直る。
『おわり?』みたいな感じでピョコっと不死鳥の尻尾が見えたのは…うん、気のせいじゃないね。

笑いを堪えているのを誤魔化すように、
ポツリと疑問を投げ掛けて後悔した。

しまった、と思っても時すでに遅し。
ちょっぴり不機嫌そうに眉間に皺を寄せるマルコ。
流石にこの言い方はなかったかな、反省。



「…んなの***が好きだからに決まってんだろい」
「え?」
「好きじゃなきゃ、こんなにならねぇよい」
「ごめんちょっと照れた」
「ん。照れてる***も可愛いよい」



むちゅっと額に唇が押し付けられて
ぎゅうぎゅうと私を抱き締めるマルコ。


「お前ぇを愛してっから甘えんだよい」
「へへ、そっか!」
「何が可笑しいんだよい」
「ううん、私もマルコ愛してるなー、一緒の気持ちだなーって思ったら嬉しくって!」




そう言って、マルコの胸板に額をぐりぐり押し付ける。
マルコはマルコで、私の背中をゆるゆると撫でながら
つむじに幾度も幾度もキスの嵐を寄越してくれた。

あぁもう。
甘えん坊のおっさん、侮れない。
完璧骨抜きになりました。






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