ブルーラグーン


勝手に覗き込まないで欲しい。
眉を八の字にさげて心配そうに見てくる、あの目が嫌いだ。ごめんなんて言わないで欲しい。

私だけを特別扱いしてるのが解る。分かり易いその優しさは純粋すぎるんだ。だからその底抜けの優しさを、愛を、私は汲んではいけないと思う。

ストレートな君の愛に応えていいのは、
真っ直ぐで、素直な子だけなんだよ。



「全く手に負えねぇよい」

「おいコラ!帽子引っ張るなって!!」

「やめろー!!離せええ!!この私がまだ飲むと言っているううう!!!」



乱暴に開けられた扉からゾロゾロと入ってくる男達は、暴れる女を抱えてやってきた。その後ろから落ちた靴を拾って歩くイゾウは、やれやれと楽しそうに笑っている。



「サッチ。こいつに水」

「へいへい。こいつはまた…とんでもなくハメ外したな」



取りあえずこれだけはと、中途半端な洗い物を片付ける間に一人一人と姿を消し、結局最後に残っていたのはテーブルに項垂れる***だけだった。



「ほら***ちゃん、焼酎だよ」

「うーん、飲みやすい」


間に受けてグラスの水をぐびぐび飲むのを眺めながら、緩む頬を引き締める。


「でも…そろそろビッグバン起き…うっ」

「はいはい。行きますよー」


しばらく気まずそうな顔しか見ていない分、酒の力であったとしても心のままに動こうとする姿を見てほっとする。堅苦しい顔でいつも何を考えているのかは解らないが、やっぱりこう、惚れた女には笑ってて欲しいもので。


「…***ちゃんビッグバン終わった?」

「はい、今超サイレンスです」


顔色は随分良くなった。
しかし、こんならしくない飲み方をした理由くらいは聞きたいもんだ。



「次は顔洗って歯磨きしましょうねー」

「…まさか寝かそうと?まだ焼酎終わってませ…」

「歯磨きしてから飲むと、あの焼酎美味いんだってよ」

「そういうことならフレッシュ!」



普段は有り得ない我儘を楽しみながら、誘導が上手くいく度に可愛いなぁとその手を握り。



「フランスパンいかがすかー!!!」

「はーい間に合ってますよー」


嬉しそうにはしゃぐ女を抱えて、
今日は俺のもんか、と抱きしめる。

戻った二人きりの食堂、
焼酎という名の水を飲む***の隣で、ずっと滅茶苦茶な話を聞いていた。

すると突然叩かれたテーブル。
がたんと音を立てて、椅子が倒れた。



「サッチさん私ん事好きでしょ」


突然睨まれた事もそうだが、酔っ払いに核心を突かれた事にも、なんで怒ってるのかは解らないがその怒った顔の可愛さにも驚いた。



「優しすぎんすよ、私悪い子だから罪悪感します。だから答えられるまで、自分に自信持てるまで待っててくらさい」


成程、近頃の浮かない顔はそのせいか。しかし自分のせいだったと解っても、全く反省する気になんかなれやしなかった。



「じゃあさ、これだけ聞かせてよ。俺の事好きか」



聞こえているのか、いないのか。
背を向け、鼻歌混じりにうろつきながらカウンターの内側でボトルの物色を始める。しかし答えを諦めかけた頃、青い瓶を取った***は、ビーチの描かれたラベルをとんでもない笑顔で指さした。



「ここで結婚式したいっす」


もう、
ぶっ飛んだ返事に笑いが止まらなくて。
この後、妙に素直な***を連れて自室に戻り、抱き締めて寝たのは言うまでもなく。



「手…出さないんですね。私ハネムーンが先でもいいんですよ」

「それは朝にしとこっかなー」



明日。
酔い覚めの君に、
もう一度聞いてみるから。


【ブルーラグーン】









カクテル
ブルーラグーン/ 誠実な愛
ウォッカ 30ml
ブルーキュラソー 30ml
レモン・ジュース 20ml

作り方:シェイク
タイプ:ショート
度数:24度




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