解散は14:30

順調だったのは、
朝スーパーの買い出し後までだった。

ワゴンの運転席にエース
後部座席で眠るマルコ
先に助手席のドアを開けたイゾウ
少し遅れてサッチ。


ここまでだ。

助手席のドアを締めた瞬間、窓に映る形相。サッチが変な顔で雄叫びを上げていた。何事かと良く見れば、か細い声で「イゾウ、指、はさんだ」と。



「いでえええええ!!!!」



一旦ドアを開ければ、助手席のドアに挟んだらしくイゾウを涙目で見つめるサッチ。


「なんでそんなとこに手置くんだよ」

「添えたっ…添えたまで…ですいでえええええ!!!!!」

「さっさと乗れようるせぇ」


大声で目を開けたマルコはゴソゴソとクーラーボックスからアイスパックを出して渡すと、また眠そうに目をこすり、寝る。


「いだぐで…息が…できねえ」

「しゃあねぇなぁ…ほら、パンでも食って喉に詰めろ」

「…ありがとうございます」

「車出すぞー」


バーベキュー場に着いたはいいが、利き手を負傷で戦力外のサッチは始終めそめそしていて全く使い物にならない。三人で火をおこし、手元にあった袋から食材を焼き始める。しかしサッチが動かなくとも問題は直ぐに発生した。



「網だろ?だったら魚だろうが」

「生ぐせぇよ。イゾウはそっちの網で焼けよな」

「なんだエース。この魚はいらねぇってんだな。あれを見ても」

「…………………誰だよ!俺のフランク全部タコさんにしたの!!!」


にょき、と次々に開く
巨大 タコフランク。


「ひぃぃぃ!!気持ち悪ぃ!!」


それをトングで捕まえたマルコは、ビール片手にかなりいい顔でこっちを見ている。


「ダイオウイカ」

「タコじゃねぇのかよ」


こいつ、いつの間に酒買ったんだ。
誰もがマルコだけには酒を与えないように見張っていたというのに。


「おいサッチ…他の食材はどうした?」

「あ………………ないっすかねイゾウさん。その辺に…」

「てめぇ…指挟んだ時にそのまま置いてきたろ」

「……………」

「すいませんすいませんすいません」

「まじかよ…俺達何しにきたんだ」

「糞リーゼントのお陰でひもじいねぇエース。魚でも食うかい?」


「あのなぁイゾウ!今この状況で焼魚なんか食ってみろ、俺達はバーベキューに肉も持たずやってきて悔し紛れに魚を食う情けない男達になるんだぞ!!」


「知ったこっちゃないね。俺は好きで食ってんだ。いらねぇんだな?お前はアレを食うんだな?」


余裕げにマイ茶碗におにぎりを入れて、
焼魚に醤油を垂らすイゾウ。



アレと示された方を見れば、
小刻みに震えるマルコが、
突然狂ったように笑い始めた。



「イカが……………墨で燃えてるんだよい!!」


トングを引っ掛けたのか傾いた網。
焼いていたものは
全て炭の上で煙を上げていた。



「もういいよ。俺コンビニ行ってくる」

「あの…すいません…俺、イゾウ様の魚食べたいです」

「あーやっぱり魚は美味いねぇ。箸がすすむわ」

「…すいません…フランクひとつ」

「俺のダイオウイカを食ってくれるのはお前だけだよい、サッチ」



紙皿にそっと乗せられた、
唯一食べられそうな
灰まみれの巨大タコフランク。

サッと、湯通しだよい。と、
ペットボトルのお茶をかけられて。
静かに地面に落ちていった。



【解散は14:30】



「幼稚園の遠足かよ」
「肉…食いたかったなぁ」
「皆様すいません」
「また行きてぇよい」




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