―ビシッ!
―バシッ!
「…っ、痛い。」
「わかってます。」
ラフィットに呼ばれて部屋に行くと気味悪いくらい穏やかな笑顔で迎えられた。
何か用か、と聞くと何も言わず名前の近くまで来て突然、好きです、と言った。
あまりに突然の告白に戸惑っている名前の返事も聞かず彼女をベッドへ突き飛ばすと、ステッキで思い切り殴った。
「好きとか言っといて、何、殴ってるんですか。」
普通は優しくなるものでしょ、と続けるが言われているラフィット本人は聞いていないようで、次はどこを殴ろうかと舐めるように名前を眺めていた。
「愛しているが故、ですよ。」
穏やかに言ったが内容が穏やかじゃない。
「いや、そもそもあたしまだ返事してな―」
―ビシッ
次は右の脇腹を殴られた。
「返事など必要ない。私は貴女を愛してます。」
ステッキを回しながらラフィットが見下す横で脇腹の痛みで上手く回らない頭を必死に動かして、名前はなんとか言葉を発することができた。
「そんな愛情表現いらない。」
言い終わると同時にラフィットが近づいてきた。
また殴られる、と身を硬くした名前だったが次の瞬間感じたのは痛みではなく名前の体を包み込むラフィットの微かな体温だった。
「…では、このように貴女に優しく触れればよろしいか?」
耳にかかる息に、くすぐったそうに身をよじっていた名前だったがふいに前髪を捕まれ、そのまま乱暴に前を向かされた。
「しかしながら、私はそれほどまともじゃない。優しくする余裕もないほどに、貴女を愛しているのです。」