「イナズマさん、あの…。」

「何だ。」

「ちょっと聞きたいのですが…。」

「……。」

「…」

「何だ。早く言ってくれ。」


気になって切り出したのはいいけど、いざとなると言えない、言えるわけない。
どうしようどうしよう。
本読んでるサングラスの間のシワが濃くなった、どうしようー。


「……………やっぱり何でもないです。」

「そうか。」



あああああああ、どうしようー、気になるー気になって十円はげできるー。
でも聞けないー。



「イナズマさんて、服とか見事なまでに色、半分に分かれてますよね。」

「ああ。」

「服も髪も靴もサングラスも。」

「ああ。」


「…………そ、それ以外のものも色、半分で分かれてるんですか?」


ああ、これで察してくれるか。
いや察されたらそれはそれで恥ずかしい。


「それ以外……あ」


いつものイナズマさんからは考えられない間抜けな声が出た、そして絶対察された、恥ずかしい。

本の方を向いている無表情の頬がほんのり赤くなった気がした。


「…女性がそんな事を聞くのは、どうかと思うが。」


ああ…言われてしまった。


「そうですよね…すいません、つい気になったもので。」

「謝る事はない。」


その間もイナズマさんはずっと本を見ていた。
でもページが進んでない。
部屋を出ようとすると、待て、と呼び止められた。




「…コートと同様のデザインだ。トランクスではない。」





そこまで聞いてませんイナズマさん。



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