穏やかな海を漂う大きな船は大海賊、白ひげ海賊団のモビー・ディック号。
その甲板で掃除をしている二人は親子程の年齢差があるもののこの船の上ではそんな事関係なく、お互いも年の事など気にならない程仲がよかった。


「ティーチ、聞いてよー!あのね!」

「うるせぇんだよ。どうせまた、あの人、の事だろ?そろそろ誰なのか教えてくれても良いんじゃねぇか?」

「だめ!秘密!」

「だったらさっさと手を動かしやがれ」


名前の話題といえば殆どが想いを寄せている“あの人”のことなのだがティーチは未だにその人物が同じこの大きな船に乗っているということしか知らない。
口を開けばあの人がどうだとか、あの人とどうしただとかそんな話ばかりだったが、目を輝かせながら軽くあしらわれても楽しそうに話している名前の相手をしているのも悪くないとティーチは思っていた。


「名前、おめぇよ、あの人って実は俺じゃねぇのかぁ?だから誰だか言わねぇんだろぉ!」

「そんな訳ないじゃん!ティーチみたいなおじさん好みじゃないし!」

「ゼハハハハ!だったらおめぇ、さっさと好きだって言っちまえよ!毎回下らねぇ話聞かされる俺の身にもなりやがれ!」


冗談を言い合える親友のような親子のような、そんな関係がずっと続くとお互い思っていた。




ある日、突然船内が慌ただしくなった。
4番隊隊長のサッチが殺されたらしく親父もクルー達も混乱している中、名前は妙な胸騒ぎを感じて喧騒の中で見慣れた影を必死に探した。


「………ティーチ」


それはまさに彼が逃げようとしていた瞬間だった。
シャツに付いた返り血だけで全てを察するには充分だった。


「……何で私に何も言わないで行こうとしてるの」


仲間殺しは御法度、ただ一つの掟を破った大好きな友人に対する感情に整理がつかないまま、ただ純粋な疑問だけが口から垂れ流された。


「…おめぇに何か言っていく義理はねぇだろ。…俺ぁ海賊だ!自分の野望の為に殺したのさ!邪魔するなら、おめぇでも容赦しねぇ!」


この船のクルーとして、大罪を犯した彼をどうしなければならないかは分かっていたがどうしても動くことができず、名前はただ立ち尽くしていた。


「……名前、俺と一緒にいる所誰かに見られちゃあ、おめぇも具合が悪いだろ。“あの人”がサッチじゃねぇことを願うぜ。」


そう言って背を向けたティーチは二度と振り返る事なく名前の前から姿を消した。


後日、大罪人ティーチ討伐のため隊長であったエースが彼の後を追った。
名前は大好きな友人がいなくなった日常を不思議と穏やかな気持ちで過ごしていた。
討ち損じた自分を悔いるべきか、大罪人と彼を憎むべきか。
たくさんの感情がぐちゃぐちゃになった中で唯一はっきり彼女の胸にあったのは、彼が最後まで自分の大好きなティーチだったということだった。

そして今でも変わらず彼が、大好きなティーチ、であると願いながら次にこの広い海で出会うことがあったなら必ず倒す決意をした。






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ティーチ船長はかっこいいです。
久しぶりに文章書いたからちょっと意味分からないかもしれませんが、そこはご愛嬌。



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