「殺すなら早く殺して」


「そんなに急ぐ必要はないでしょう、時間はいくらでもありますからね」



半ば誘拐のようにこの保安官に監禁されてからもう2週間。
殺すどころか乱暴されることも一切なく監禁されていることも忘れてしまうほど快適な生活を送り、最初こそ少々強引だったものの私が抵抗しなくなれば保安官は実に紳士だった。
スラリとしたシルエット、色白な肌に綺麗な顔、そして紳士であり知性的でもあり一見何の問題もないむしろ完璧なまともな人間であるようにも思われる彼がなぜ私を監禁しているのかはいまだ謎だが、私は日に日にこの生活に慣れ彼への警戒心は薄れていった。



もうあの日から何ヶ月たっただろう、監禁されていることをまったく意識しなくなり気を抜けば自分が強引に連れてこられたことを忘れてしまうくらい、私は自然にラフィットと生活をしていた。
ラフィットと一緒であれば外出もできた、おそらく他人から見れば私たちは恋人同士にでも見えるんじゃないかというほど私たちは笑い合っていた、私自身さながら気の置けない幼なじみや恋人と過ごしているような感覚に陥っていた。

私はラフィットが好きなのかもしれない。

もちろん自分があくまでも監禁されていることを忘れたわけではない、しかしラフィットはどれだけ月日がたっても私の嫌がることはせず優しく紳士に接してきてくれた、正直今まで恋人にしてきた男達とは比べものにならないほど私を大切にしてくれていると感じることができた。

もしかしたらラフィットも私を愛しているのかもしれない。

昔、私を半ば強引に監禁したのもラフィットの少し変わった必死の愛情表現だったのかもしれない、そう思うと私はさらにラフィットを愛さずにはいられなくなった。


「ラフィット…私、貴方を愛してるみたい」


いつもと変わらぬ夕食の時間、何気なくつぶやくようにラフィットに告げてみるとラフィットはいつもと変わらない微笑みで、私もですよ、と言ってくれた。
お互いを知り本当に愛し合うことができたなら、出会いのきっかけなどどんなおかしなことでも気にならなくなってしまう自分のなんと単純なことだろう。





その夜、私はラフィットにとても静かに殺された。
薄れゆく意識のなかで見た、泣き叫びながら自分のしたことをつまり私の殺害を嘆きながら震えるラフィットの姿が不思議で仕方なかった。




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このお話には後日続きを作ってあぷしようと思ってます。







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