「ラフィットって、あたしのこと、殴りませんよね。」


ラフィットはあたしを殴ったことがない。
他のクルーや立ち寄った街の人を男女関係なくその凶器ステッキで叩いているのを度々目にしていたが、叩かれる要因があったとしても、自分が叩かれたことは一度もなかった。

「ホホホ、そんな事を言って名前、殴られたいのですか?」

くるくる器用にステッキを回しながら、しかしやはり彼はステッキを構えたりはしなかった。

「殴られたいわけじゃないけど、ラフィット、他の人は女の人でもステッキでびしばしやるじゃないですか。」

ああ、そうですね。
シルクハットの位置を直しながら興味なさそうに相槌をうった。

「嫌がる貴女を無理矢理殴るというのも大変そそりますが、そういうわけにもいかないのです。」

「なんでー?」



「一度叩いて貴女が少しでも声を上げたり泣いたりしようものなら、貴女が亡くなるまで、止められる自信がないのです。」





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