「名前、愛していますよ」

どれほど愚かで非生産的な行為だと罵られても、これは独占欲や所有欲などという言葉では到底言い表せない程の愛の深さ、つまりは私たち二人が愛し合っているという事実を何よりも明瞭に示す行為なのであって、例え理解されることが無くともこれは所謂慈しみの愛撫、嗚呼、苦痛に歪められたその表情もまた美しいのです、だからこそ貴女を傷つけていっそのこと殺してしまいたいのに、貴女を喪うことを畏れる私のなんと矮小なことか。

「…ぅ、ラフィット、」
「愛しているんですよ、殺したい程に。貴女が私だけのものになればいいと思っています」

首を締め付けるように添えた手に力を込めると泣きそうな顔をするもので、何が哀しいのですかと尋ねると、微かに首を振ってただ小さく擦れた声で「あいしてるわ」と呟く名前。薄く濡れた瞳に、酸素を欲して震える唇、細い首、いくつもの鬱血痕を残した胸元は何処までも私の感情を掻き乱し、そう、私はそれが愛しくてたまらないのですよ、出来ることなら、

「ラフィット、わたしは、あなたのものだから」

思考中、妄執にまみれた脳髄を優しく溶かすように染みた彼女の言葉は何よりも甘美で、何度だって殺して、と微笑んだ名前を快楽と背徳に歪んだ視界に留め、私はまたその首筋を指先でなぞった。



パラノイア、
望まれたヂェノサイド


(咎められるべき愛の形も、私たちの前には正当だと居座る)



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テーマ「人外ファンタジー」
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