「ご存知ですか、名前。」
「なにを?」
少し日差しが強い日の午後。
パラソルを広げた下にいた名前の隣に腰を下ろしたラフィットが唐突に質問した。
「ある本で読んだのですが、とある古代の国では女性器の一部を切り取ってしまう風習があったらしいです。」
女性に快感を感じさせないためだそうです。
正直なぜいきなりラフィットがそんな話をし始めたのか名前はさっぱりわからなかった。
「へえ。何でそんなことするんですか?」
「そうした行為の時に得る快感は男性のみに許されたものとし、女性は子供を宿すためのものであり快感をその男性に捧げる、という女性差別的な考えから生まれた風習だったらしいです。」
「ふうん。」
度々ラフィットはわけのわからない人だと思っていたが、今回は本当にわけがわからない。
そう思いながら名前は、でもまあいつもの事だ、と、船の遥か上を飛ぶカモメをぼーっと眺めていた。
その隣でラフィットは立ち上がり名前の持っていたパラソルを取り上げてしまった。
「あ、ちょっと、眩しいから返してください。」
「やってみてもいいですか。」
何を?
そんな言葉を発する前に答えがわかってしまった名前は、自分の平均的な文脈把握力をはじめて嫌になった。
「嫌です。」
「やってみたいのです、是非貴女で。」
差し出された手は紳士的なそれとは違って、半ば強要をしているようだった。
「ご安心を。私が、それとはまた違った快感を教えて差し上げましょう。」
にっこり微笑んでいるが、瞳は怪しげに鈍く光っていた。
「ご遠慮しますー。そうゆう危ないことは他をあたってください。」
それだけ吐き捨てると名前は室内に逃げてしまった。
「ホホ、」
貴女の快感を私だけのものにできたら。