「保安官さん、今日はどんなお話してくれるの?病院なんてもう退屈よ」

「そうですね…では名前の好きな話をして差し上げましょう」


月が空の真ん中に上る時刻、少女のいる薄暗い真っ白な部屋には男の長い影が。
少女の手首につながった点滴がぽつぽつ落ちる音だけが響く静かな時間が流れていた。


「じゃあ、あのお話がいい。王子様と女の子の話。」

「いいでしょう。…


むかしむかし、大きな国の小さなお城に王子様がいました。
その国は平和で、王子様も楽しくお城で暮らしていました。
ある日、王子様が町に出てみると、立ち寄ったお店で素敵な女の子を見つけました。
王子様はその女の子に一目惚れしてしまいました。
しかし女の子はすでに婚約者がいて王子様のお嫁さんにはなれません。
それでも女の子を諦められない王子様は家来に言って女の子を無理矢理お城に連れてきました。
お家に帰して、と泣きじゃくる女の子を見て王子様は
「泣くのはおよし。貴女の婚約者は貴女を騙してお金を盗ろうとしていたのです。」
それでも女の子は泣き止みません。
「泣くのはおよし。私なら貴女を騙したりしないよ。」
それでも女の子は泣き止みません。
「私は王子なのですよ。」
女の子はやっと泣き止みました。
そして王子様の方を見て、こう言いました。
「それでも私は貴方を愛してはいません。」
怒った王子様は女の子を牢屋に閉じ込めてしまいました。
王子様は女の子はおばあちゃんになるまで牢屋で「愛してる」と女の子に言い続けたのでした。


おしまいおしまい。」


ラフィットが話し終わって少女を見ると、少女は外を向いて遠い目をしていた。


「王子様は本当に女の子を愛していたのかな?」


長いまつげを揺らしてラフィットを見つめる少女の目は微かに潤んでいて、雫がこぼれる前に頭を撫でてやると柔らかい微笑みを浮かべた。


「愛していたのでしょうな。愛しているから、どうしても一緒にいたかったのでしょう。」


その回答に納得いかない様子の少女を、さあもう寝る時間です、ちゃんと寝ないと退院できませんよ、とベッドに寝かしつけるとその白いおでこにキスをして部屋を出た。


白く塗られほのかに消毒液の臭いがする少女の部屋を出ると、そこは何のへんてつもないぼろアパートだった。


「愛しているから…手元に置いておきたいのです。」




……………………………

意味不。
突発的に思いついた話など粗末なものです。



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