※原作完結後


 長らく留守にしていた喧嘩相手が地球に帰還したのは数か月前のことだ。ターミナルでのゴタゴタがようやく落ち着いてきた頃、待ちかねていたように俺は、毎日のように街中でチャイナを探しては喧嘩をふっかけている。
 絶対に口に出せやしないが、チャイナとまた戦える日常が我ながら相当に嬉しいらしい。
 ただ気になることが一つだけある。長くなった髪、輪郭に女性らしさが増した体つき。二年ぶりに再会を果たした喧嘩相手は、宇宙規模の成長を遂げていた。バストサイズもまた例外ではない。どうやらチャイナはサイズの合わない下着をつけているらしく、こぼれた肉が俺との喧嘩の最中もばいんばいんと揺れるので、正直目のやり場に限っていた。こんな喧嘩のハンデがあっていいわけない。俺はハンデ無しでチャイナと戦うために、チャイナをある場所に連れて行った。

「下着屋ってマジで男の居場所がねえんだな。すげえ落ち着かねェや。ま、とりあえず店員呼ぶからサイズ測ってもらいな。お前が欲しい乳バンド買ってやらァ」
「ブラのことそんな呼び方する奴、お前だけアル」

 うるせえな。知ってるわ。ブラジャーっていう呼称が恥ずかしかっただけだ。
 彼氏さんですかぁという店員の声を聞き流し、会計を済ませる。チャイナが選んだのは薄いブルーの上下セットだった。オイ見てんじゃねーヨとレジに立つ俺の横でチャイナが文句を言う。そう言われても金を払うのは俺なので、まじまじと見る権利があるはずだ。

「なんでセットのやつ買ったのヨ。別に上だけでいいのに」
「脱がした時に上と下でちぐはぐだと萎えんだろ」
「萎え……? なんでお前が脱がすこと前提アルか?」

 喧嘩の延長で服が脱げることも……あるか?
 チャイナの服が戦闘でビリビリになるところを想像して、少年漫画じゃないんだからと己の妄想を笑い飛ばした。
 そもそも、萎えるってなんだ。まるで俺がチャイナの下着姿に欲情するみたいに聞こえるからやめてほしい。笑わせんな。まあ、喧嘩している時に揺れまくる相手の乳は死ぬほど見たけれど。初見の時は五度見くらいした。

「勘違いするなよ。てめーに下着を買ったのは、俺たちがフェアに戦うために必要だったからでィ」
「何がフェアじゃないのかよく分かんないけど、お前と戦う時はこれ着ければいいアルか」
「そういうこった」
「つまり、勝負下着アルな!」
「ぶっ」

 満面の笑みで宣言されたので、思わず噴き出した。
 それ、他の男には絶対言うなよ。できれば買ってやった下着も俺と会う時だけ着用しろ。そんな思いを抱いてようやく俺は、こいつと別の勝負もしたかったんだなと己の気持ちに正直になれたのだった。


'2019.11.07 戦う前から勝負はついてる
'2021.01.10 改訂
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