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どうしてこうなったんだろう。
熱に浮かされたブレインの片隅でぼんやりと考える。
―――ただのビーコンでしかない自分があのノックアウト様を犯している。
こんなに美しい人を、自分の上司を、そんな背徳的な考えが付き纏う。
それでも突き上げる腰の動きを休めることはない。
コネクタを抜き差しするたびに受容器からオイルが零れ、何度も射精されたことを物語っていて思わず目を逸らす。
行為に集中しなければ叱られる、と腰を掴み直した。
すると自分の下で厭らしく乱れているノックアウト様が腕を伸ばしてきた。


「んっ、あっ…あ…はあ…っ」


首に回された腕に力がこもり抱きしめられる。
耳元で聞こえる声にブレインがどうにかなりそうだ。
きっと自分なんかの細い腕じゃ役不足なんだろうと知りながら抱きしめ返す。
ノックアウト様が抱き着いてくる時は後ろからの行為を望む時同様、顔を見られたくない時だ。
きっと零れ落ちる涙を見られたくないからだろう。
とっくに気付いているというのに、自分にはそれを拭うことすらさせてくれない。
自然と抱きしめる腕に力を込めてしまう。


「あ…あんっ…ふ、あ…」


ああ早くこの無意味な行為が終わればいいのに。
そんな冷めた思いを打ち消すように少し乱暴に突き上げる。
思った通りノックアウト様の体が大げさに跳ねた。
そのまま奥に打ち付けるようにオイルを吐き出すと同時にノックアウト様も達したようで、一際大きく鳴いた。
ノックアウト様の腕から力が抜けるのを確認するとゆっくりとコネクタを引き抜く。
だるそうに起き上がるノックアウト様の体を支えようとしたが、弱々しく押し返された。


「……いい」


小さく呟くと受容器から溢れ出るものと体に飛び散ったオイルを見て自嘲気味に笑った。
傍に立ち尽くす自分の肩を叩くと「出ていけ」と命じられた。
どうしようかとも迷ったが、素直に軽く一礼するとノックアウト様の部屋を出た。
扉が閉まる直前、微かに聞こえた名前は自分を呼ぶものではなかった。










(あなたがそれを、望むなら)


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