ストップ赤面化!
「鬼道さんっ怜衣乃がお話したいって!」
「え、」
「そうそう鬼道さんこいつ話があるらしいですよ」
「話してあげてください鬼道さん!」

りまの一言を引き金に、次々と緊張気味の鬼道さんにお願いするあたし達。そのせいもあって、怜衣乃と鬼道さんは別室に追いやられ、一対一で対話する事に。
まあ、とりあえず怜衣乃、一回爆発しろ!!




第7話 ストップ赤面化!




怜衣乃の頬の熱は、いつまで経っても引かなかった。むしろ、天才ゲームメーカーと向かい合って座ってから、更に増したように見える。今怜衣乃の頬にパンをくっ付けたら、片面だけ焼けそうだった。しかし、それに比例して会話は皆無である。影山の部屋と同じようなデザインかつ薄暗さの部屋なのに、お互いに声帯を震わす事がない。2人の間の空気は重苦しいそれへ変わっていっている気がしてならない。それは、扉をこっそり僅かに開けて見守るりま達にも言えた事であった。

「ちょ、何してんのあの人、さっさと話せば良いのに」
「仕方ないよ千歳、怜衣乃は鬼道さん大好き人間だから」
「そもそも怜衣乃、鬼道さん限定で純情だからね……話せないのも無理ないか」

いつもとは正反対の、煮え切らない態度を取る怜衣乃に、思わず千歳は奥歯を噛みしめる。ぎりりと歯ぎしりをすれば、りまは期待に胸を膨らませ、雅は遠い目で見ながら出来る限りの小声でフォローする。

「あの」

先に口を開いたのは、鬼道だった。まだ肩に力が入っているその人は、ゴーグルのレンズ越しに怜衣乃を見据える。対する怜衣乃は様々な意味で心臓を大きく跳ねさせ、ずっと俯いていた顔を上げた。部屋には向かい合うソファーと、2人の間にある漆塗りの机しか存在しない。必然的に、鬼道を見る選択肢を選ばざるを得ないのだ。視線を大きな理由もなく他所に外す事は、流石に不審に思われると怜衣乃も内心は分かっていた。

「は、はい」
「あなたも、総帥に呼ばれたんですか?花鳥風月だという話を聞きましたが、本当なんですか?」

ゴーグル越しの真剣な視線が怜衣乃に伝わる。緊張している鬼道は中学校一年生相応の姿で、怜衣乃は思わずかわいいと言ってしまいそうだったのを堪えた。その代わり、膝に置いてある拳に精一杯の力を入れた。

「はい。私達四人は、花鳥風月と呼ばれる者です。と言っても、そんな、自覚はあまりないんですが……」
「そう……ですか」

小さく相槌を打って、鬼道は怜衣乃から目を離さなかった。何かすがるような、期待するような、それでいて怯えるような、強い者の目とは決して言えないそれ。そこで、怜衣乃ははたと気が付いた。

(鬼道さん……りまの話を信じるなら、同学年の友達とかいないんじゃ……)

りまが言うには、源田は今年からサッカー部に入るとの事だった。一年生。出会いの年であり、鬼道はまだ円堂達と出会う前で、恐らく影山から影山流サッカーを仕込まれている最中のはず。もしくは、今年という新たなサッカー部始動に向けて特訓あるのみか。そんな時に友達作りなんて出来るだろうか。
そして、もし中学から急に破壊のサッカーの司令塔をやれなんて命令されていたとしたら、その不安は――

(思ってるより、ずっとずっと、鬼道さんは不安がってる……未来を知ってる私達より、ずっと)

怜衣乃はきゅっと締まる胸を押さえつけた。それから、すっと息を吸う。驚くくらい自然に。

「鬼道さん」

それは自信に溢れた声だった。机に乗る鬼道の右手を取って、怜衣乃は握った。両手で包み込んだ。考えた末の様々な思いを込めて。鬼道の手は冷えきっていた。

「鬼道さん。私達が……私が……あなたを支えてみせます。必ず。心配する必要はありません……私達を信じてください。私は……あなたが不安な時、苦しい時、側にいて支える事を誓います。鬼道さん、あなたは素晴らしいひとなんですから……」

少しずつ、少しずつ、鬼道の手がぬくもりを取り戻す。
鬼道は驚いてしばらく口が半開きだったものの、ぐっと口元を引き結ぶと怜衣乃の手を握り返した。怜衣乃がはっと我に返る。
初めて鬼道が、穏やかに笑った。

「ありがとう」

怜衣乃が再び赤面して机に倒れ伏すまで、あと三秒。


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久し振りの更新です。
怜衣乃は鬼道さん大好きです。ひたすら鬼道さん大好きです。
まだまだ春休みは続きますよ!
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