特訓特訓!
「む、うぅぅ……!なんで出ないんだよ馬鹿ー!」
「こんなただのサッカーボールのくせに…」
「ってかまだ出来ないの怜衣乃」

あれ、いつの間に特訓しようって事になったんだっけ?
……という、か。自分の技はデスゾーンだから、早く怜衣乃にはボールに慣れて欲しいんだけどなぁ……。



第4話 特訓特訓!




4人はどうやら春休みになったばかりの頃にトリップしてきたらしく、まだ桜も蕾の頃で、風景は少し物寂しい。そんな中、寮近くの公園に、帝国学園サッカー部のユニフォームであるダークグリーンや明るいオレンジ色の服を身に纏う4人がいた。制服ついでに届いた品だ。
りまのサッカーしようぜ!との言葉により、4人は何故か部屋の隅にあったサッカーボールを持ち出して、公園に訪れていた。そこで先程、千歳が1つの提案をした。

「帝国の技覚えて鬼道さん達びっくりさせてみない?」

にぃっと口端を上げる千歳は、正に悪戯っ子のそれである。しかし断る理由もなく、むしろ3人にとっては良い提案だったため、異論もなくすんなりと受け入れられた、しかし。

流石に、運動が苦手な怜衣乃とりまにとっては、難しかったらしく。半ばやけくそで、投げやりにイリュージョンボールとフルパワーシールドの練習をしている。身体能力が上がって(特訓中に気付いた)いても、やはりスポーツには慣れやら何やらが必要らしいのだ。

それに加えて。雅と千歳には、1つ気付いた事があった。

「おかあさーん」
「自分千歳のお母さんになった覚えないから」
「冗談だからね雅!……やっぱイナイレ世界に来たからかな、ほら見てよ!」

ユニフォームのポケットに手を突っ込んだまま、千歳は目を爛々と輝かせながら、器用に爪先でボールを胸元に蹴り上げ、そのままトラップする。そして、

「そぉ、れっ!」

気合い十分な掛け声と共に、足にギュルギュルと風が渦巻くような音がして、キラーフィールズを思わせるような黒い風が足にまとわりつく。そして空高く蹴り上げると、ボールは風と共にギュルギュル回って、遥か天空まで飛んでいく。それが落ちてきた時には、黒い風の渦は収まっていたものの、ボールは回転がかけられたまま跳ね返り、最終的には千歳の足元をコロコロ転がる結末に終わった。

「ね。キラーフィールズ出来ると思わない?」
「うん、いや、もう」

考えるという過程をすっ飛ばして、雅は千歳の問いを聞いた瞬間、呆けた顔で自然と頷いていたのだった。





「あー……もうやだ」

一方怜衣乃は、額に流れる汗を乱暴に拭って、サッカーボールをまるでゴミでも見るような目で見つめた。元々頭脳プレーが得意な怜衣乃は、体を動かすのは苦手なのだ。

「怜衣乃ーまだ出来ないの?」
「うっさい。勉強出来ない奴に言われたくない」

イリュージョンボールが上手くいかない苛つきからか、横目で千歳を睨む。理不尽な怒りを受けて千歳はムッとしたものの、次の瞬間は歯を見せてにやりと笑った。

「良いの?怜衣乃。このままじゃ鬼道さんをびっくりさせられないよ?」
「やる」

強い口調で言い切る怜衣乃の目には、炎がめらめらと燃えていた。鬼道が関わると何とも扱いやすい人間が、怜衣乃なのである。





「帰るよ」

そう言われても、りまはなかなか動けずにいた。嫌だったのだ。フルパワーシールド特有の、オーラのような物すら出せない自分が。口を引き結び、俯いて黙る様子を見て、千歳と雅は早めに帰るようにと言って帰り、怜衣乃は途中まで付き合ってくれたが、疲れて帰ってしまった。

ぼんやりと目が霞む世界で、りまは自分の手が淡い桜色を発しているのに気が付いた。人気の少ない公園は闇が支配していて、コウモリでも飛んでいそうな勢いだ。グローブもしていない手は泥だらけで、所々切れて血が出ており、痙攣して震えている。

ふと、頭上から、心地良い雨が降り注いだ。

「なあ、少し良いか?」

立っているのが精一杯なりまは、頭だけをぐるりと回転させて、その雨の根元を見た。
顔は見れなかった。が、確かに見えたのは、オレンジ色のフェイスペイントと、横に流れた髪の毛。

「そのユニフォーム――」

気が付いた時には、りまは整理のつかない脳内思考から背くように目を閉じて、体が仰向けになるように倒れていた。
慌てた相手の声など、りまは意識の外だった。

――――――――――
ようやく次回から帝国メンバー出ます。次回主1メイン。出番は出来る限り均等にしたいですみんな好きなのd((
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