予想外、です!
「お前達には帝国学園へと通ってもらい、帝国サッカー部が完璧になるためのサポートをしてもらう」

突如現れた影山総帥の要求に、私達はただ言葉を飲み込めずにいた。
いや、鬼道さんに会えるのはこれ以上ないほど俺得ごふんげふん。

……てか、そもそも花鳥風月って何?いや言葉の意味は知ってるけど。



第2話 予想外、です!



「……怜衣乃」
「はぁ……はいはい」

横に並んでいるりまが、すすっと距離を詰めた。怜衣乃は顔をしかめながらも、ため息混じりに受け入れた。だって、今は仕方ない。

4人は何故か正座していた、寝間着状態のままで。理由といったら、やはり目の前の人物のせいだろう。影山零治、鬼道を一流のゲームメーカーに育て上げた張本人。それは強調された顎を見ればほぼ明らかである。

「質問があるなら受け付けよう」

デスクに座り肘を付くその人が笑う。りまなんかずっと真っ青で震えていて、千歳に至っては欠伸をしている。個々によって様子がまったく違っていた。

さて、影山の出した条件はこうだ。帝国学園への転入及び帝国サッカー部のサポート。これを呑んでくれれば、衣食住や金銭面の全てを保証する。因みに、呑まなかった場合は、この場から追い出されて宛もなくさ迷うはめになるという。

ゲームやアニメの本編で、酷い事ばかりを繰り返した影山の命令に従う事については、4人は今のところ戸惑いはなかった。何故なら、影山の本来の姿を、彼女達は知っていたからである。
それよりも、問題は別にある。

「は、はい!」
「何だ」
「影山さんはどうしてそんなにあgうぶっ!」
「こここんの馬鹿千歳!なんつー事聞こうとしてんの!!すみません影山さん何でもありません」

勿論雅の拳骨を頭から食らった千歳のような、馬鹿な質問ではない。千歳に続いて怜衣乃が片手を挙げる。

「はい、総帥」
「……何だ」
「私達である理由は何ですか?」

そう。問題はそれだった。
自分達である理由が、4人にはほとほと見当がつかないのだ。むしろ、もっと人間の出来た他人がいる訳だから、その人にお願いした方が良いとも思う。
たかがいち学生。しかもそれぞれ欠点を持った。影山の望む人間は、きっと完全無欠が相応しいはず。それなのに4人が選ばれた、その理由。

「それは……ないな」

それは即答で、あまりにも予想外の言葉だった。影山は笑う事もなく、それを口にした。
呆気なさと、再び飲み込めない言葉が飛び出してきた事で、4人の頭は真っ白になった。

「ただ、お前達はこの帝国学園の話に聞く花鳥風月らしい。だから選ばれた。……それしか言えんな」
「影山さん、花鳥風月とは……?」

雅が尋ねると、影山の説明が始まった。


――花鳥風月。一般的には日本の美しいとされる物と言われるが、帝国にはそれとは違う、こんな話が伝わっている。

サッカー界における花鳥風月。それは美しく、時に儚く、時に猛々しい。

サッカー界における花。その者桜色の髪を持ち、満開に開く花がボールを受け止める。同様に、人のこころを儚きながらも受け止める。

サッカー界における鳥。その者銀色の髪を持ち、場を飛び回りボールからその翼でゴールを守る。同様に、常に人のこころの隣に居続ける。

サッカー界における風。その者水色の髪を持ち、嵐の如くボールを奪っては疾風の如く運ぶ。同様に、人のこころを動かしその運び手となる。

サッカー界における月。その者金色の髪を持ち、光速のボールを放つその姿は正に煌めく月。同様に、人のこころを暗闇から救う光となる。


花鳥風月が揃うその時、光と力をその者達に与えるだろう――……。



「正にお前達の事だろう?私は光には興味がないが、力には興味がある。お前達である理由はないが、お前達がもし花鳥風月なら、ここに置く必要がある」

語り終わった影山が、サングラスを上げて、愉快そうに笑ってみせる。

「さあ、どうする」


……呑むか、呑まないか……。


4人の心は決まっていた。

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