1 この勝利は学校中で大きな話題となった、設立間もない水泳部がまさかの地方大会進出できた事は全校集会にて校長先生より発表された、まだまだ精進して全国大会を目指して欲しいと期待を込めた言葉をいただいた、全校生徒からの大きな拍手と壇上に上がる私達は恥ずかしながらもその期待を胸に練習にも熱が入る。 地方大会へと出場するにあたり、このままコーチが居ない中での練習だと校長先生が言ってくれた全国大会への道が厳しい為に、笹部さんが臨時コーチとして名乗り出てくれたのだった、スイミングクラブ元コーチとあって、様々な水泳機械が設置され今までの練習とは違い、皆の熱が上昇して行く中、遙だけは今までと変わらずにただ黙々と泳いでいるのだった。 そろそろ晩御飯の時間のため支度をしようとした時家のチャイムが鳴ったのだ、先ほど別れたばかりの真琴と何故か浴衣姿の渚が家を訪れたのだった。八幡様の夏祭りが開催されているから一緒に行かないかと言うのだった、それならさっき言ってくれればよかったのにと思ったがしょうがないなと微笑んだ。 『まって、今準備するから』 「ああ!!あきちゃんは一回マコちゃん家に!」 『え?』 まあいいからいいから、と言われ私は渋々頷き真琴の家に行った。すると蘭と蓮が迎え入れてくれた、その後ろには真琴のお母さんが微笑んで迎え入れてくれた 「秋羅おねえちゃん!」 「いらっしゃい!」 『蘭も蓮も大きくなったね!』 「いらっしゃい、秋羅ちゃん!さあ、入って入って!」 まだ不思議に思いながらもお邪魔しますと橘家に入る。客間に通され真琴のお母さんは箱を持ってきてその箱のふたを開けた。そこには白をベースにしてピンクの華がちりばめられた可愛らしい浴衣が入っていたのだ 「これね、私が昔来ていたものなの、蘭にはまだ大きいし、秋羅ちゃんに来て欲しいと思って」 そういう事だったのか、ようやく理解した私は真琴のお母さんのご好意に甘えることにした、浴衣を着るなんて何十年ぶりの事だろう胸をときめかせながら浴衣へと着替えた。次は髪の毛ね!なんて言われて髪の毛のセットまでしてもらった。お母様手先が器用なんだな 「はい、完成」 帯をそっと触れ鏡に映る私の横に笑顔の真琴のお母さんが映る。 『あ、ありがとうございます』 「ううん!とっても似合ってるわぁ!きっと真琴達もびっくりすると思う」 「わあー!秋羅お姉ちゃん可愛い!」 「似合ってるー!」 『照れるなぁ…ありがとう』 私は三人に見送られ真琴の家を出て行こうとドアを開けたら、いつの間に合流したんだろうハルを先頭に真琴、渚と目が合う。しばらく動かない3人を見て私はだんだんと顔が赤くなる 『…あの、黙ってそんな見られるとはずかし…っうわ?!』 「すっごく可愛いよー!!あきちゃーん!」 急に抱きつかれて私は若干こけそうになる。うわ下駄って歩きづらい! 「うん!似合ってるよあき」 『あ、ありがとう!』 なんかこんなに褒められることないから照れてしまう。それを見てか渚はさらに「照れてるあきちゃん可愛いー!そそるー!」ときゃっきゃしていた。…そそるってなんだ 「ほら、ハルちゃんも!」 「…。」 「んもぉハルちゃん!こう言う時はちゃんと女の子褒めてあげるんだよ?」 「…っ、」 渚の言葉に、ゆっくりと遙は私と目を合わせた、軽く口を開け何かを告げようとしたが、再び閉じた。そんな遙に助け舟を出すように真琴が代弁していた。 「普段のあきと違うからハルも驚いたんだよ。ほら、驚いて言葉が出ないって事だよ」 「…」 『え〜嬉しいな〜んも〜』 「あきちゃんって調子良いよね!!可愛いのは本当だけど中身残念だよね!」 『なにをーー!?!』 ぽこぽこと渚を叩くが全くへっちゃらなようで笑ってかわしていた。そんな私たちを真琴が止めてそろそろ行こうか、という。渚が先頭になり次に真琴がついていく、ハルに「私たちも行こう」と微笑めばハルは私をじっと見た 『ハル?』 「…似合ってる」 『!』 またすぐそっぽを向いて、歩き始めたハルに私は口を開いて驚いた。まさかの不意打ち…無口な彼から言われるのはとても嬉しかったんだ |