「とうっ!」

怜くんが相変わらず素晴らしいジャンプでスタート地点に降り立った。
怜くんが泳げなくちゃいきない日にちまであと2日にせまっていたわけだけど…おにゅーの水着でテンションがあがっているような怜くん

それを見て私たちはおお…と感動する

「一流選手みたいな風格だなぁ…」
『見た目だけね』
「本当に泳げちゃうんじゃないかなぁ?」
『どうだろ』
「もう秋羅ちゃん〜」
「あの怜ちゃん見てると小さいころのあきちゃん思い出すね」
「あはは、確かに!」




「あきちゃん惜しいよ!」
『むー…』
「頑張ろうあき!」
『あのね私気づいたの……私だけ皆と違ってフリフリりぼんじゃん』
「え?うん」
「可愛いーよ!」
『これだから駄目なんだと思うの!』
「「え?」」「……」

〜数日後〜

『みて!!』
「あ!競泳用の水着だ!」
『リボンはずしたの!可愛くないけどこれで皆と一緒!およげるはじゅ!』
「おお!さっそくやってみようか」




「結局なにも変わらずじまいで泳げなかったよね〜」
「そんなことが…」
『でもハルのおかげで泳げるようになったもん...いいもん...』

拗ねる私に渚がにこにこしながら頭を撫でる。ちらりと視線をはずせば怜くんがスタートダッシュの形をつくり相変わらずの綺麗なフォームで水の中へと飛び込んでいった。またしてもおおっとみんなから歓声がもれる
けど、怜くんはその場で止まりながらしかもどんどん沈んでいく

「ぶはあっ…!なぜだ…っ!!?」

「ああ、、」

するといきなり水の中に入って怜くんに近づいたハル。私たちが首を傾げているとハルは言った

「俺が教えてやる」

『・・・!』

「泳げるようになりたいんだろ」

「泳げるようになりたいんだろ」

「俺が教えてやる」


懐かしい光景が脳裏に映った。あの頃と変わらず…か。
そういや私たくさんハルにおしえてもらったんだよなぁ…
それから怜くんはハルに詳しく夕方になるまで丁寧に教えてもらっていた




「…教えられるのはここまでだ。あとは自分を信じてやってみろ」
「はい!」

怜くんは元気よく返事をし水の中へと潜っていく。そして泳ごうとするが――…

その身体はただ浮いているだけでまったく進んでいなかった


「………、ぷはっ、なぜなんだぁぁぁぁぁぁあああ!!!」






「…天才とは1%のひらめきと99%の努力」
「エジソンの名言…」
「努力にまさる天才は無しってことですね」
『そんじゃ、怜くんは?』
「やっぱ地道に練習するしかないのかなぁ」
「だがしかし、このエジソンの名言は1%のひらめきが無くてはいくら努力しても無駄…ということでもあるのよね」
「努力全否定!!??」

すっかり落ち込んでしまっているみたいで怜くんはプールサイドの隅で体育座りをしていた。私はハルをひっぱり怜くんのそばに行かせる

「…こういうときは何も声をかけないほうが」
『そんなことないと思う。ハルが言えばね、怜くんも何かわかると思うんだ』

私たちが近づいた音に気が付いたのか怜くんはこっちを見た

「秋羅さん、遙先輩…」

私はハルを押す

「…もう好きにしろ」
「…どういうことですか」
「泳ごうと思うな、飛べばいい」
「意味が分かりません」
「……心で飛べ」
「もっと意味が分かりません」
「感覚で…「そういう抽象的な言い回しはやめてください!…どうすれば遙先輩のようにあんな風に自由に泳げるんですか…僕は悔しい、なぜ自分にはそれができないのか…っ」
「…俺も、自由じゃない」

ハルに白い蝶が止まった。
ハルが怜くんの隣に座り、二人揃ってフェンス越しになにか遠くを見ていた。私はそんな2人を見てどこか似ているようだなと錯覚し少し微笑んだ。そこで私は怜くんに言った

『憧れるのは良いけど、別にハルになるわけじゃないんだから別のことしたら良いんじゃないかな?』
「え?」
『そういえば…バッタ、まだやってないよね?』
「そういえばそうだな」

目を見開きこちらを見る怜くんに私はニコリと笑い言った

『試してみる価値はあると思うんだ!明日またやってみよ!』

「は、はい!」

怜くんは嬉しそうに笑った。なぜだかは私にも分からないけどきっと怜くんにはできる気がした。




そしてついに最後の一日。ひめくりカレンダーにも「今日がさいごの一日でーす」とゴウらしく可愛い字で書かれていた。ジャージに着替えて部室に行けばハルがいた。軽い挨拶してプールサイドのほうに行けばナギがビート版を持って「もうこれで出場しよう!」と意気込んでいた

『それってルール的にあり?』
「いやでも…ルール違反ではないはず」
「後でルール調べて見よ!」

すると水の音が聞こえてきて一斉にみんながプールのほうを見る

「…バッタ泳いでる」
「ハルちゃんかな?」
「いやでもハルは…」

みんながハルだと思っていたはずだがそのハル本人はさっき私が部室で見たし、ハルは基本フリーしかやらない。そんなことを思っていたら後ろから「俺じゃない」とハルが現れた

ということは…

『…怜くんだ』

「怜ちゃん!?」

プールから顔を出したのはあの怜くんだった。それにみんなは慌ててプールにかけよる

「いまバッタ泳いでなかった!?」
「はい。秋羅先輩にバッタを挑戦してみればと言われてやってみたら…できました」
「ええー!なんでぇ!?」
「でもさすがあきちゃんだね!」

『私はなにもしてないよ。よかったね、怜くん』

私が微笑むと怜くんも嬉しそうに微笑んで「はい」と頷いた。なにはともあれこれで県大会出場ができることが決まって皆は一安心という感じで安堵していた






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