「邪魔するゼー!」「ボンジュー!」、ピンポンも無しに入ってきたギルとフランシスに思わず笑みがこぼれてしまう。いらっしゃい、とソファから首だけを回して挨拶をすればフランシスが腕を広げて駆け寄ってきたが、横からアントーニョが飛び蹴りしたので、結局後からあくびをしながら入ってきたギルちゃんとビズーをするだけで終わった。アントーニョはと言うとフランシスに「なまえに変な事しようとしてたやろ」と黒い笑みを浮かべながら説教している。レディ好きなフランシスが来る度にアントーニョはフランシスに私を触れさせないよう必死になっているが、フランシスには想ってる人がいる事を私はちゃんと知っている為(何回も二人で女子会してるしね!)、彼を警戒した事などない。

「何やねんお前ら!せっかくなまえとイチャイチャしてたっちゅうのに!」
「そんな事言って〜トーニョも俺らに会いたかった癖に〜」
「会いたかった訳あるか!」
「この前同僚と飲んだ時だか忘れたけど、『最近会ってへんで親分寂しい〜(´;ω;`)』ってメール送ってきたのお前じゃねえか」
「プーちゃんそれ言ったらあかん」

 そんな事をメールで言っていたのか、どれだけ仲が良いんだこの三人は。良い年なのにつるむ三人が可愛くて思わず声を出して笑うと、アントーニョが半べそになりながら抱きついて来た。「ちゃうねん!こいつらが俺に会いたくて毎回来てんねん!」とフランシスとギルちゃんを指差して言う。「そんな事言って、二人が来る度に一番嬉しそうにしてるのアントーニョだよ」、そうからかうようにアントーニョの顔を覗き込んで言えば珍しく彼は紅潮した。追い打ちをかけるかのように、フランシスとギルちゃんも私達が座るソファの後ろから「ほら!ほら!」と嬉しそうに笑っている。ああもう!!っと恥ずかしさに耐えられなくなったアントーニョは夜ご飯の準備をするためキッチンへと駆けて行った。
 アントーニョが作ったご飯が盛られたお皿を次々とテーブルに持って行き、先にワインを飲み始めていたフランシスとギルちゃんを呼ぶ。「ご飯くらいお兄さんが作るのに」、そう毎回言いつつも美味しそうに食べるフランシスも素直じゃないなあと思う。話の大半が悪ノリとからかいで出来ているこの三人の会話、しかし私が混じり、しかもお酒が入ると必ず私とアントーニョについて嫌と言うほど聞かれる。

「前から気になってたんだが、なまえはトーニョのどこが良いんだ?」
「プーちゃん、何でなまえの事呼び捨てなん!二人どういう関係なん!親分嫉妬するわ!」
「本当だよね、何でなまえがトーニョに惹かれたのかお兄さんにも分かんない。なまえだったら俺位が似合うと思うんだけど、ねぇどうなまえ?」
「おい人ん家で人の嫁さん口説くなや」

 「大丈夫やで、なまえ、答えたくなかったら答えんでええからな!・・・まあ親分もめっちゃ聞きたいねんけどな!」、トーニョがそう言うと男三人でウェーイとまた勝手に盛り上がり始めた。それぞれもう一口お酒に口をつけると、答えを待つかのように私の方を見て来た。

「え、ええ、言わなきゃいけないの?」
「二人ももう結婚してるんだし、恥ずかしい事なんてないでしょ?」
「…面白いとこかなあ、いつも私を笑わせてくれるし」
「やっぱりそうやんなあ!親分面白いやんなあ!」
「…料理も出来るし、家事も手伝ってくれるし。自分が一番大変なのに周りの事ばっか心配してるとことか、優しいんだなあって思う」
「…お、おう、そうやんな、親分何でもこなせるからな!」
「私が間違った事したらちゃんと怒ってくれるし、」
「…」
「あと、顔も好きだし、あの、体も好みだし・・・」
「…なまえ、あの、ちょ、」
「あ!全力で私の事好きになってくれてる感じが好き!凄く愛されてる気分になる。あと、」
「はいはい、なまえストップ〜もう十分、トーニョもどうしようもない位赤くなってるし」

 アントーニョの好きな所を考えているのに夢中で気づかなかったが、アントーニョはいつの間にか耳から首まで真っ赤になっていた。「え、あ、ごめん」と何故か私が謝ると、フランシスとギルちゃんは笑った。「んだよ、結局は二人で仲良く、ってか。フランシス帰ろうゼー」「プーちゃんも羨ましいくせに〜」「うっせ」、そういう会話をしながら帰り支度をする二人を引き止めようと思ったが、二人は意味ありげに微笑んだだけで、「また来るね」と言って帰って行ってしまった。どうしようとオロオロしたが、取り敢えず真っ赤になった顔を手で隠しているアントーニョへと駆けた。私が何か言う前に、アントーニョは私を今までにない位キツく抱きしめてきた。

「え、ちょ、どうしたのアントー、」
「親分のなまえの好きな所も沢山あるねん。料理上手いとか可愛いとかそんなん当たり前やけど、何よりも一番好きなのは、何もせんでも親分を嬉しくさせてまう所が好きやねん」

 「仕事が上手くいかへんかった日でも、なまえの顔見ると俺もっと頑張ろうって思えんねん」「とにかくなまえがいるだけで、俺までが幸せになれんねん」「それ自覚する度に、俺めっちゃなまえの事好きやねんな、って思うわ」、一気にそう言うとアントーニョはいつも通りヘラッと笑い、軽くキスを落として来た。私もアントーニョに負けない位幸せだよ!、何故だか必死になってそう言い返せば、アントーニョはまた嬉しそうに笑い、今度は深いキスをしてきた。「何や、いつもうっといあの二人やけど、今回は感謝せなあかんなあ」、二人で笑いながらフランシスとギルちゃんに心から感謝しておいた。今頃二人は彼女がいなくて泣いてるんだろうけども。



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