アントーニョと籍を入れてから夜ご飯は私が担当することになった。私も働いていると言ってもやっぱり家計の殆どはアントーニョの収入からになるだろうし、やっぱり一応"妻"として何か家事の事を担当したいと思い、自分から率先して、夜ご飯を作ることにしたのだ。トマトのイラストが描かれたエプロンを着けて、鍋に入ったスープを混ぜて考え事をしていれば、玄関でガチャリと鍵の開く音がした。

「ただいま〜」
「おかえり、アントーニョ」

 アントーニョの"ただいま"が聞こえて安心したと同時に、アントーニョは玄関からバタバタと小走りしてキッチンに入ってき、勢い良く私を後ろから抱きしめて来た。アントーニョは"んー、"と私の首筋に顔を埋めながら、私の腹に回していた腕の力を少し強めた。「なまえの匂いやあ」と嬉しそうにするアントーニョに私も素直に嬉しいとは思ったが流石に料理してる時は危険なので、リビングでご飯待っておいてと言えば、アントーニョは子供のように頬を膨らませた。

「おかえりのちゅーしたってやあ」
「、危ないから料理終わってからね」
「嫌やあ、せっかく仕事頑張ってきてんで俺ー」

 "なまえの顔早よ見たくて帰ってきてんけど"、私の首筋に顔を埋めたままそう言ってきたアントーニョに思わず私が赤面してしまった。駅から自転車飛ばしてきたのかな、若干汗で湿ったワイシャツが私の肌に触れてそう思った。イチャイチャするのは料理の後で!とちゃんと叱るかそのまま流されてしまおうか迷っていれば、アントーニョが先に口を開いた。

「今日もな、仕事中なまえにめっちゃ会いたいとかちゅーしたいとか思っててんけど、なまえはちゃんと仕事頑張ってんねやろうなあって思ったら俺も頑張れてん。せやから今日めっちゃ仕事頑張ってん、ヘトヘトやわ親分」

 アントーニョはそう言い終えると今度は黙り込んだ。
 本当に疲れているようだったので、アントーニョに顔を上げるように言った。一応念の為ガスを切って後ろを向けば、案の定いつも以上に疲れた表情をしたアントーニョがいた。少しでも元気が出ますように、そういう意味を込めてアントーニョの前髪をかきあげ、おでこに軽くキスを落とした。途端顔を輝かせたアントーニョにやっぱり私が恥ずかしくなってしまい、「後でちゃんともっとするから今はこれで勘弁して、」と言った。目を合わせるのも恥ずかしくて急いでスープ作りを再開すれば、アントーニョはまた私を後ろから抱きしめてき、さっきの私のキスのお返しなのか首筋にキスを落としてきた。

「もうなまえほんま可愛いねんけど、俺をどうしたいん」
「いや何かごめん、」
「さっきまで疲れとったけどめっちゃ元気になったわ、ありがとう」
「こちらこそ、仕事お疲れ」
「おん、」
「そういえばさっき言いそびれちゃったけど、」

 "私も仕事中アントーニョの事ばっか考えてました"、自分の顔が真っ赤なのも承知でそう言えば、アントーニョは驚いたのか私の腰に回していた腕の力が弱まった。てっきりいつもの調子で「もうなまえほんま可愛い!」みたいに言ってくるかと思ったのだが、アントーニョは何も言って来なかった。不思議に思って上半身だけ回してアントーニョを見れば、アントーニョは片手で、トマトみたいに真っ赤になった自分の顔を覆っていた。二人で赤くなってるのが何だかおかしく思えてクスッと笑えば、アントーニョは苦笑しながら「なまえほんま好き、」と普段では考えられないくらいの小さな声で言ってきた。



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