「ブフッ」

 寝癖をつけたまま学校へと登校してきたキッドに思わず吹きだしてしまう。いつもはワックスやらでガチガチに頭を固めてくるのに(そこまで似合ってもいないのに)、今日は寝坊したのか髪は下ろしたままで見事な程に後ろからビョンと寝癖があり、可哀想な位に目立っていた。

「何だよ、人の顔見て笑いやがって」
「だって、ちょ何そのおちゃめしてみた的な行動wwwwwwwバロスwwwww」
「お前潰されたいのか」
「せめてそれ、寝癖直してから言い直せよ」

 まだ気付いてないのか、"はあ?"と眉間に皺を寄せるキッドにいつもポケットに入ってる鏡でキッドを映してあげれば、目を大きく丸くして私から鏡を奪い取り、まるで有り得ないとでも言うように手櫛で必死に髪を梳き始めた。直らないことに気付いたのか、自分の鞄からワックスを取り出し、大急ぎで教室から出て行った(ワックス持参してんのか)。
 数分して帰ってきたキッドに良い笑顔で迎え入れたら、眉間に皺を寄せてかなり嫌そうな顔をされた。嫌味で「私も寝癖ない?」と今朝綺麗に梳いてきた髪を見せれば、髪を思い切りぐしゃぐしゃにされた。

「おーっしゃ、上等じゃねえか!」
「お前が嫌味なことするから悪ィんだろ!」
「ほら、そこ立って!アソコもぎとってやるから!ローが!」
「いや、お前の発言でドン引きなトラファルガーの顔見てから言えよ」

 すぐ隣の席で読書をしていたローに顔を向ければ、案の定"こいつ無いわー…気持ち悪いわー…"とでも言いたげな顔をしていた。再度キッドに顔を向ければ、調子に乗ったのかニヤケ顔で私の方を見ていた。そんな表情のキッドにムカついたから何かキッドが怒るようなことを言おうと思ったが、今のキッドに寝癖は無いし、髪はがっちりセットされてるし、気持ち悪い事に不良の癖に制服はきっちり着てるしで、何も言うことが無かった。
 調子に乗ったキッドは相変わらずニヤケ顔で私の顔を覗き込んできて、"大体お前も俺の寝癖にすぐ気付くなんて、俺のこと好きすぎんだろ"なんて、実際キッドのことが好きな私にキッドは悪い冗談を言ってきた。流石の私も怒って、思い切りキッドの胸板を突き飛ばしてやり、ペッと唾を吐く真似をしてやった(唾吐き格好いいと思ったんだもん)。

「お前、何すんだよ!」
「キッドの阿呆が!今すぐにでもアソコもぎ取ってやりたいわ!ローが!」
「トラファルガーかよ」

 大声を出す私に驚きながらも、キッドは何か考え事をしてるようだった。何だか馬鹿らしく思った私が教室から出ようとすると、何を思ったのかキッドは私の手首を掴んできた。いやいや、素直にローにアソコもぎ取られとけよと思いながら振り返れば、キッドはすぐさま"もしかしなくても、さっきの図星だったんだろ"なんて爆弾発言をこっちによこしてきやがった。確かに図星だったし、今のキッドの爆弾発言も図星だしで恥ずかしくなった私は黙り込んでしまった。しかし黙り込んでから後悔した、黙り込んで返事をしなければ「はい」と自分で言ってるようなものだ。

「いやいや、その、」
「違ェのか」
「いやー、だから、」
「…まあ、俺もお前のことばっか見てっから人の事言えねえんだけどな」

 何て言い訳しようかと頭であれこれ考えてる内にキッドがまたもや訳の分からないことを口にして、ずっと俯かせていた顔を思わず上げる。するとそこには若干顔を赤くしたキッドが私の手首を握ってる手とは逆の手で顔を覆い隠していた。私がさっきしてたみたいに何を言えば良いのか分からないが為に「あー」とか「うー」とか照れながら言うキッドに私はキッド以上に照れてしまい、取敢えず今日のキッドはいつも以上に格好いいなと思った。



中心が膿む






20110803
title by 彗星03号は落下した

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