全校生徒の投票で決まる我が学校の生徒会長。大体毎年学年一の秀才で真面目な人が生徒会長になるんだが(全校のトップに立つんだから当たり前か)、今年はどういう事か秀才だが、私の知っている知人の中でも群を抜いての不真面目な奴が生徒会長になった。
 コンコン、と生徒会長室のドアを二回ノックする。入っていいぞという偉そうな声が聞こえ、溜息を一つついてから、ドアノブを握る。どうせ奴の事だから両足を机の上に乗せてドヤ顔で私を迎えるんだろうなと思って中に入れば、案の定あのくそ長い足を机の上に置いており(おいおい、書類踏んでんぞ)、悔しいが整った顔でドヤ顔をかましていて持っていた書類を投げつけたくなった。

「書類持ってきました」
「この前正しい言い方教えてやったろ」
「くそトラファルガー様、お前のせいで整理する羽目になった書類を持ってきてあげました感謝して下さい」

 ニヤけた顔でもう一度言うように言われたので、こちらも精いっぱい良い笑顔でもう一度書類を持ってきた事を言って、手に持っていた書類を机にバンと音を立てて置けば、トラファルガーはもう一度気持ち悪く笑い、席を立って私の隣に来た。と同時に首に手をかけてきたから思い切り嫌な顔してやった。

「触んないで下さい」
「うるせえ」
「そろそろ訴えますよ」
「誰に訴えるつもりだ、俺が生徒会長だぞ」
「…職権乱用ですね」
「そろそろ黙れ」
「いや本当に触んないで下さいトラファル、」
「黙れ」

 私の頭の後ろを片手で掴みながら、片手で私の手を握ったりなぞったりと変な行為をしてくる目の前のトラファルガーは何だか無表情で、本当に何を考えているのか全く分からない。生徒会長だから何をやっても良いというのはおかしいと思いながらも、トラファルガーは残念ながら学年一の秀才で一応何をやらせても出来る為何も言えない。トラファルガーは私の頭に回していた手を離し、すると自分の額を私の肩口に置いてきた。いい加減離せよと言おうと口を開けばまた「黙れ」と言われた。
 しばらくして、思ってる以上に時間が経っている事に気付き、遠慮がちにそーっと上半身を離せば、今度は強引に引っ張られ、気付けばトラファルガーの唇が自分のそれと重なっていた。自分でも驚いた事に自分はトラファルガーに平手打ちする訳でも殴る訳でもなく、ただその場でトラファルガーに手を繋がれたまま、トラファルガーをじっと見た。トラファルガーも勝手に人の唇を奪った事に罪悪感など感じてないのか、私の目をじっと見てきた。

「…お前凄ェ無防備だな」
「無防備なんじゃなくてどっかのくそ野郎が強引なだけです」
「でも嫌じゃねえんだろ」
「今にでも股間蹴ってやりたい位です」

 ならやってみろよ、といつものようなニヤケ顔で言ってくるトラファルガーの股間を折角だから、今後のセクハラ防止の為にも蹴ろうと思ったが、「やっぱり可哀想なのでいいです」と思ってもない事を言って蹴らなかった自分にはトラファルガーも私自身も驚いた。そんな私に調子乗ったのかトラファルガーはまた私にキスをしようとしてきたが、今度は何の迷いもなく思い切り股間蹴ってやった。いい加減仕事しやがれ。
 



独裁者の湖に眠る人魚






20110717
title by √A

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