自分でもよく理由は分かってない。可愛い女の子(胸も大きかったちくしょう)に告白されて照れるゾロを偶然見てしまって、女の子への嫉妬よりもまず可愛い女の子に告白されるゾロに嫉妬したのは確かだ。だって私はゾロの幼馴染であって、一番仲の良いクラスメイトであって、妹のような親友のような存在である訳だから、ゾロに好意を抱くだなんてありえないのだ。その割に告白されるゾロを見て胸が痛くなったのは事実で、その後ゾロが部活を終えるまで私はひたすら教室で一人声を押し殺しながら泣いていた。自分でもあれ程泣いた事に驚愕している。私がゾロを好きになる事はない、そう思い込んでいる自分がいるため、未だに自分が泣いた理由は分からない。
 「おい、帰るぞ」、部活を終えて教室まで私を迎えに来たゾロの声にハッとして気付かれぬように涙を拭く。ゾロはやっぱり鈍感だからか私のそんな仕草にも全く気付かないまま、すたすたと先に廊下を出て下駄箱の方へと歩いていってしまっていた。こういう所が好きになれないんだよな、そう思いながら急いで私も下駄箱の方へと小走りする。私達は付き合っていないのだが、幼馴染のせいか昔から下校は一緒にしている(一緒に登校もしようと試みたが、ゾロがいつも寝坊するため諦めた)。当たり前だが、下校するからと言って何があるわけでもなく、ただただ二人で歩くだけなのだ。「今日の部活どうだった」だとかしょうもない会話しかしないのだ。だからいつもの感じで何も考えずに私は「今日告白されてたね、羨ましいなあ」と口に出してしまった。

「だから泣いてたのか」

 何言ってんのこいつ、思わずびっくりしてゾロの方を見たが、全く顔の表情が変わっていなかった。何で私がゾロが告白されて泣くと思ってるの、何でそんな事普通に言えるの、それよりどうして私が泣いてた事知ってるの。聞きたい事がたくさん頭の中にぽんぽん浮かんでくるのに私は眉を下げるだけで何も言えずにいた。少し冷静になった所でやっと「別にゾロが告白されてたからじゃ、」と私が口を開けば、私が言い終える前にゾロは「はいはい」とあくびをしながら返してきた。

「別に俺の事で泣いてたとか泣いてなかったとかはどうでもいい」
「…自分で言ったくせに」
「お前は何で昔から一人で泣くんだよ」

 そう言うとゾロは私と似たような、眉の下がった表情になった。それと同時に急に止まって、私の目頭をぎゅうっと押してきた。「え!?え!?ちょ、痛い痛い!!」なんて痛がる私なんてそっちのけでゾロをただただ目頭の辺りをぐりぐり押してくる。真剣な目で「泣け」と言ってきたゾロが怖くなったのか、痛みに耐えられなくなったのか、それともさっき泣き足らなかったのか分からないが私の目からはまた涙が溢れ出てきた。泣き出した私に満足したのかゾロは珍しく私を抱き締めてきた。「ゾロのくせに」「ゾロの前で泣きたくなんかない」「ゾロのせいで」「何もかもゾロが悪い」、ゾロに文句を浴びせればゾロは「うっせェ」と返し、更に私を強く抱き締めるだけだった。さっき私の目頭を押してきたのもゾロなりの優しさであった事、そして私がいつの間にかゾロの事を好きになってた事に気付いて私は更に泣いた。

「、本当何で私ゾロの前で泣いてんだろ」
「俺の事好きだからだろ」
「、私ゾロの事好きになりたくない」
「…そりゃどうも」
「でもやっぱり好きなんだと思う、」
「んなもん知ってる」

 そう言うとゾロはこれまた珍しく声を出して笑った。ゾロの胸板に隠れていた自分の頭をもぞもぞさせ、ゾロを見上げれば心底嬉しそうな顔していて、私まで嬉しくなった。「なんだ、ゾロの方が私の事好きなんじゃん」、涙目で意地悪く笑ってそう言えばいつもみたいにゾロは乱暴に私の頭を撫でた。「うっせ」、と言いながら照れ隠しに私の頭を撫でるゾロが可愛くて私はいつの間にか泣くのを忘れていた。



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20130519
title by CELESTE

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