「私を温めて下さい」
「気色悪いんでよそを当たってください」

 いきなり秋から冬に切り替わってしまい、この気候に耐え切れず、寒くなった私は彼氏であるキッドに思い切って「寒いからキッドの体温で私をあたためて(はぁと)」と甘えてみた(ちょっと違うけど)。そしたら冒頭にあるようにばっさりと切り返された。一応私彼女だし何なのこれあんまりじゃね?最近溜まってるから苛ついてるの?と思ったことを口に出して聞けば今度は拳骨で頭殴られた。痛い!
 殴られた部分を自分で撫でながらキッドと一緒に校門を出ると何でか更に空気が冷たく感じられた。「寒ィ寒ィ」なんて女らしからぬ発言をしながらポケットに手を突っ込む私をキッドは一瞥してから溜息を吐いた。ただでさえ何か幸薄そうなのにこれ以上溜息吐くなよと心の中で呟きながら、キッドにどうしたのか聞いた。

「お前もう少しは女らしくしてみろよ」
「…甘いもの好きじゃん私」
「甘党な俺が女子っぽいって言いてえのかお前は」
「てか前から言いたかったけど甘党なキッドって本当可愛いよね食べちゃいたい」
「お前女だけどたまに一緒にいて、自分のケツに危機感じるわ」

 コンビニの前を通ると同学年の子何人かが肉まんを買ってる所を目撃して、私もキッドに買ってとおねだりしてみた。すると自分も食べたかったのかすんなり了解し買ってきてくれた。何これ怖い。肉まん二つ買ってコンビニから出てきたキッドに一つ貰い、また帰路を二人で歩き始める。「キッドはさ、」そう私が口を開けばキッドは私の方を向いてきた。

「何だよ」
「…いやあのそのやっぱり女の子らしい子が好きなのかなあと思いましてですね…」

 こういう質問しちゃう自分うぜえ!なんて思いながら、勇気を出して聞いてみれば、キッドは「そりゃな」と即答してきた。あ、こいつ本当デリカシー無いわ。実際結構傷ついたが、「そうですよねー」なんて平気なフリをして肉まんにかじりつけば、キッドが私の手首を掴んで立ち止まった。うわああ!!!肉まんの中身丸ごと落ちたうわああああ!!!

「おいおいおいおい肉落ちたぞおいおいおい」
「そっちより肉で汚れた俺の制服の心配しろよ彼女なら」

 「あ、ごめん全く気付かなかった」と返事をして手で汚くなった所を払えば、変な目で見られた。せっかく払ってあげたのに…人の好意をこいつは…なんて口を尖らせれば、キッドは私の顔を両手で掴んで来た。

「ごめん何か恥ずかしい」
「お前ちょっと黙れ」
「…うっす」
「…さっき校門で言ったことは忘れろ」
「ええ、何で」
「いや、さっき女らしい奴が好きだとか言ったけどよ、」

 「お前の場合は女子っぽくならなくても好きだから何かどうでもいい」、最後らへんは口あたりをマフラーの中に入れてよく聞こえなかったが、とにかく嬉しいと同時に私まで恥ずかしくなってきてしまい、照れ隠しに肉まんの皮をちょびちょび食べた(我ながらムード無い)。ほら肉まん買いに行くぞ、とキッドに手を引かれてやっと正気に返った。

「キッドって私の事相当好きだよね」
「当たり前だろ」

 じゃなきゃ付き合ってねえよ、なんて笑ってるキッドはきっと自分の天然さを理解してない。それにしてもあまりにも嬉しい事を言われすぎて、熱いこの顔はどうすればいいのか。



心臓を彩る






20120512
title by alkalism

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