「キッドー、喉渇いたあ」
「お前一応俺が先輩だって知ってるか」

 元々楽器を弾くのは得意だし、歌うのだって好きだし…そういう理由で友達と文化祭の時にパフォーマンスをしたのがきっかけだった。前々から軽音部とやらがあるのは知っていたし、特に興味が無いわけでも無かったが、入ろうとは思わなかった。だからパフォーマンスをした後、「入れ」と入部届けを押し付けてきた赤髪の先輩には感謝すべきなのかもしれない。私のパシりになってくれてありがとうございます的な意味で。

「いつから俺がお前のパシりになった?」
「そういや今日ロー先輩がキッドの財布取ったって自慢してきたよ」
「俺の財布無いと思ったらあいつかァァア!」

 ヤケクソになりながら、自分が担当のドラムを弾くキッドをケタケタ私は笑いながら眺めた。「他のメンバー遅ェな」、そうキッドが言ってから皆が"今日委員会で遅くなることを部長であるキッドに伝えておいてくれ"とお願いしてきた事を思い出す。「あ、皆今日委員会だって」「言うのが遅ェよ死ねよ」「ていうか苺ミルクが凄い飲みたいどうしよう」「お前本当嫌だ」、そんな下らない会話をしていたが、皆来ねえなら帰るかとキッドが提案し、私たちは帰ることにした。
 私を置いてそそくさと帰ろうとするキッドの腕を掴んで自販機の方へと向かう。こうなることを予想していたから早く帰ろうとしたんだろう。だがしかしそんな事させない私はキッドに苺ミルクを買うように促した。「お前本当友達失くすぞ」そう言われたが、"キッドがいるし"、と返事をすれば何か嬉しかったのか苺ミルクを二個買ってくれた。

「キッドって何だかんだで私に優しいよね」
「うっせ」
「否定しないなんて可愛い!嘘だけど!」
「苺ミルク返せ」

 私の両手にある苺ミルクを奪おうとするキッドから最初は逃げたが、何だか可哀想になったので、走るのをやめて苺ミルクを一つしょうがなくあげた(キッドが買ったやつだけど)。

「お前って先輩の俺に本当容赦無ェよな、うぜェわ」
「褒めるな照れる」
「褒めてねえよ」
「でも私、一応キッドがドラム弾いてる時は素直に格好いいと思ってるよ」

 初めてキッドの事を褒めたので、キッドは心底驚いた顔をしていた。そんなキッドをケラケラ笑っていれば、キッドは「お前本当うぜェし生意気だけど、俺もお前の声と歌ってる時は凄ェ好きだぞ」と真面目に言ってきた(これだから生真面目なキッドは…)。たまにはキッドも嬉しい事言ってくれるなあ、と笑顔を見せてやったが、キッドの口が苺ミルク臭かったのですぐに股間キックしてやった。そしたらすかさずヘッドロックされて死ぬかと思ったけど、改めてこの人が部活の先輩で良かったと思った。



アマリリスブルー






20111016
title by 革命の養女

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